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老犬の認知症

  犬の認知症(にんちしょう)とは、一度発達した脳細胞が減少し、かつてはできていた行動ができなくなってしまった状態を言います。人間はもとより、犬や猫などでも発症することが確認されています。

犬の認知症の症状

 犬の認知症とは、老化に伴って認知力や反応性が低下し、学習記憶能力が衰えてしまった状態のことです。「認知機能不全症候群」(CDS)とも呼ばれます。何の対策も講じなかった場合、犬の脳は加齢とともに徐々に衰えを見せることは間違いないようです。
老齢に伴い、犬が認知症にかかることは避けられない  カンザス州立大学獣医学部のジェイコブ・モーザー氏は、加齢による変化は犬も人間も同じであることを突き止めました。神経組織内の情報伝達速度に関し、健康な若い犬では時速360キロであるのに対し、老犬では時速80キロ、そして脳内で代謝されるエネルギー(ブドウ糖)の量に関しては、3歳を過ぎるころから代謝量が減少し、14歳を過ぎると、若い頃の半分にまで減るそうです。
 さて、上記したように老衰によって犬の脳の機能が低下し、認知症を発症してしまったとき、具体的にはどのような徴候が現れるのでしょうか?犬の認知症に伴う症状は、一般的に「DISHA」(ディーシャ)と呼ばれ、以下のような項目から成り立っています。ひとつの目安としては、8歳を過ぎた大型犬、および10歳を過ぎた小型犬が以下のような症状を示した場合は、認知症の可能性を疑います。また、飼っている犬に強く認知症の傾向が見られる場合は、ロファイナ式チェックリスト内野式チェックリストなどもご参照ください。
Disorientation
 「Disorientation」(D)とは「見当識障害」のことで、空間認知の変化、周囲の環境に対する把握不全、身に付けた経験の混乱等を意味します。具体的には以下です。
  • よく知っている屋外で迷子になる
  • よく知っている室内で迷子になる
  • よく知っている人を屋外で認識できない
  • よく知っている人を室内で認識できない
  • ドアの開いてるほうではなく蝶番の方へ向かう
  • 家の中で間違ったドアに進む
  • 落ち着きがなく家の中で歩き回る
  • 障害物を避けることができず立ち往生する
  • よく知っているものに異常な反応を示す
Interaction
 「Interaction」(I)とは「社会的交流」のことで、人間や他の動物との関わり方の変化、学習したはずの指示に対する反応の低下などを意味します。具体的には以下です。
  • 挨拶行動の低下
  • 撫でられることへの反応の低下
  • 飼い主と遊ぶことへの興味の低下
  • おもちゃで遊ぶことへの興味の低下
  • 他の犬と遊ぶことへの興味の低下
  • 指示に対する反応の低下
  • 課題遂行能力の低下
  • 飼い主に異常につきまとう
  • ちょっとしたことで怒り出す
  • 屋外で出会った犬への攻撃性
  • 同居している犬への攻撃性
  • 他の犬から攻撃性を向けられる
Sleep-wake cycle
 「Sleep-wake cycle」(S)とは「睡眠サイクル」のことで、日中の睡眠時間が増え、逆に夜間の睡眠時間が減少することを意味します。具体的には以下です。
  • 就寝時間になっても寝ようとしない
  • 不眠と過眠を繰り返す
  • 夜中に徘徊し、遠吠えをする
  • 日中の睡眠時間が延びる
House soiling
 「House soiling」(H)とは「不適切な排泄」のことで、室内での排尿・排便コントロールの喪失を意味します。具体的には以下です。
  • トイレ以外の場所や飼い主が見ている前で排泄する
  • 睡眠場所で排泄する
  • 排泄の前兆(トイレサイン)が見られなくなる
  • 外に出た後、室内に戻って排泄する
  • 排泄場所の変化
  • 突然おしっこを漏らす
Activity
 「Activity」(A)とは「活動性」のことで、目的を持った活動の低下と無目的な活動の増加を意味します。具体的には以下です。
  • 慣れ親しんだ刺激に対する反応の低下
  • 無関心の拡大と探索行動の低下
  • 何もない場所を見つめたり、噛み付いたりする
  • 人や物を異常に舐め続ける
  • 目的のないうろつきや無駄吠えが増える
  • 食欲の増加
  • 食欲の低下
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脳の老化を食い止める方法

 脳細胞の死滅によって発症した認知症は、基本的に治療法がありません。これは、死んだ脳細胞を完璧に再生することが、現代の医学では不可能だからです。しかし、認知症を発症する前に、飼い主がある特定の生活習慣を守っていれば、犬の脳の老化や認知症の発症を防ぐことができるという可能性が、一部の研究者によって示されています。

刺激と脳の老化

 イリノイ大学心理学部のウィリアム・グリーノ氏は、脳への適度な刺激が老化現象を遅らせるという事実を突き止めました。

実験方法

 彼はまず、変化のない環境でラットを育てました。研究室のケージの中に閉じ込められ、見るものも聞くものもまるで変化しない、まるで独房のような環境で育てられたラットは、ぶくぶく太って不健康そのものになったといいます。
 その後、このラットをはしご、トレッドミル、滑り台、ブランコなど刺激的な遊具にあふれるアミューズメントパークのような環境へ移したところ、驚くべき変化が起こったとのこと。まず、適度な運動によって体重が減り、健康体になったこと。そして注目すべきは、脳細胞同士をつなぐシナプスと呼ばれる神経接続が25~200%の割合で増えたということです。
 この実験結果から、動物が老齢に達した後でも、神経接続が増えるということ、および新たな経験や問題解決など、適切な刺激が、脳内の神経接続を増やすきっかけになるという事実が判明しました。
 すなわち、飼い犬の知力の衰えを可能な限り遅らせたいのなら、犬に適度な刺激を与えることが重要ということです。

犬の脳に刺激を与える方法

 以下では、犬の脳を活性化する方法をいくつかご紹介します。脳へ適度な刺激を与えることで、老化をなるべく遅らせましょう。
犬の脳を活性化する方法
  • 散歩コースを変える  散歩という動作にはそもそも脳を効率的に活性化する作用があります。体を動かすためには脳からの遠心性(脳から末端へ行く)の伝令が必要で、外の世界からの情報は逆に求心性(末端から脳へ行く)の伝令が必要となります。これらの伝令を処理するのは脳ですから、必然的に脳を活性化することにつながってくれるというわけです。脳への刺激を高めるため、いつもとは違うルートを選んでみましょう。いつもとは違う景色、初めての臭い、聞きなれない犬の吠え声など、犬にとって初体験のことがたくさんあるに違いありません。 犬の散歩
  • 歩き方を変える  犬の歩き方には、速度によってウォーク、ペイス、トロット、ギャロップなどがあります。いつもとは違ったペースで散歩してみましょう。また室内では、ソファと壁の間など、体の方向転換ができないような狭い通路に犬をおびきよせてみましょう。犬がそこから抜け出ようとすると、後ろ歩きをしなければなりません。このような今までに無い体の使い方が、犬の脳を活性化してくれます。犬の足腰が元気なら、アジリティつきのドッグランを利用するのも同じ効果があります。
  • 知育玩具を与える  犬の知能を高めるとうたっている知育玩具がたくさん市販されていますので、こうしたおもちゃを与えてみましょう。おやつを取り出そうと必死になったり、変な音に耳を傾けたりすること自体が、脳を活性化します。犬が飽きないよう、定期的におもちゃを入れ替えてあげるのがベストです。 犬のおもちゃ・玩具
  • 芸やトリックを教える  日常生活においては必要のないような、様々な動きを芸やトリックとして教え込むことが、脳の活性化につながります。ゴロンと寝転がったり後ろ向きにバックするなど、通常ではありえないような動きをすることで、筋肉とそれをつかさどる脳が刺激を受け、退縮が遅れます。 犬の芸・トリック
  • マッサージをする  犬が自発的に脳を働かせるわけではありませんが、飼い主がマッサージを施してあげることによって、犬の体全体に刺激を与えることができます。皮膚の触覚を通じて入ってきた信号は、脳で処理されるときに電気信号に転換され、機能を活性化してくれるはずです。 犬のマッサージ
  • 犬と旅行する  近年はペットと泊まれる宿が増えてきました。比較的簡単に犬と旅をすることができますので、オートキャンプやホテルなど、犬と一緒に旅行に行ってみるのもよいでしょう。こうした体験は犬の脳のみならず、飼い主の脳にも刺激を与えてくれそうです。外泊が難しい場合は、日帰りのドライブでもよいと思います。 犬との外泊とドライブ
  • 新しいペットを迎える  常にうまくいくわけではありませんが、新しいペットを迎えるのも犬にとっては大きな刺激になります。タイミングとしては、先住犬が老境に入る前がよいかもしれません。犬が老いて体力が低下したときに、元気いっぱいの子犬や子猫の相手をさせるのは、いささか酷です。ですから、先住犬にまだ元気が残っているうちに新しい犬を迎え入れ、先住犬が老境に入ったタイミングで新参犬や猫が成熟する、といったお迎え計画の方がベターでしょう。

抗酸化物質と脳の老化

 認知症の中にはアルツハイマー型認知症という病気があり、人で発症した場合、認知機能低下や人格の変化などの症状をきたします。この病気は人間のみならず犬にも発生することがわかっていますが、抗酸化物質がこのアルツハイマー型認知症を予防するという研究結果が注目されています。
 そもそもアルツハイマー型認知症を引き起こす原因は、脳内における過剰な酸化だと言われています。酸化の副産物として発生したアミロイドと呼ばれるタンパク質が脳内に蓄積し、本症を発症するというのがそのメカニズムです。

実験方法

 脳内におけるアミロイド発生という問題を解決するため、トロント大学のミルグラムらは「脳内の酸化を抑制すれば、アミロイドの生成も減るのではないか?」という観点から、抗酸化物質のもつ可能性を検証しました。
 彼らは、抗酸化物質を豊富に含んだ特別食を老齢のビーグル(9歳以上)に与え、6ヶ月後、作業テストを行って知能の働きを調べました。結果、抗酸化物質を摂取した老犬群は、摂取しなかった老犬よりはるかによい成績を収め、答えを間違える割合はおよそ半分だったといいます。
 また同チームは、脳への刺激と抗酸化物質の摂取を組み合わせた場合、脳の老化を遅らせることができるかどうかも実験しました。
 チームは48頭のビーグルを用い、半分には普通の食事を、残りの半分には抗酸化特別療法食を与えました。さらに、それぞれのグループの半数(12頭)には脳を鍛えるための様々な刺激を週に5~6回のペースで与えました。1年後、4組のグループに対して知能テストを行ったところ、特別食を摂取し、脳の刺激プログラムを受けていたグループが、最高点を収めたといいます。
 このように、抗酸化物質が脳内の酸化を食い止めることでアミロイドの生成が抑制され、結果としてアルツハイマーの発症予防につながるという事実は、科学的に証明されているようです。
 近年は老犬用ドッグフードが売られていますが、そのパッケージに「抗酸化成分」と書かれている場合は、アミロイドの沈着を抑制することで脳の老化を遅らせることが主たる目的です。 Learning ability in aged beagle dogs is preserved by behavioral enrichment and dietary fortification

抗酸化物質を摂る方法

 以下では、脳内における酸化を抑制してくれる抗酸化物質を効率的に摂取する方法をいくつかご紹介します。アミロイドの生成を抑えることで、アルツハイマー型認知症の発症をなるべく予防しましょう。
抗酸化物質の摂取方法
  • 抗酸化食品を食べる  食材の中には、抗酸化物質をあらかじめ豊富に含んでいるものがあります。具体的にはゴマ、ブロッコリー、ニンジンやカボチャなどの緑黄色野菜、ほうれん草、リンゴなどです。必要カロリー数をオーバーしない範囲内で、こうした食品をエサやおやつに混ぜて食べさせておけば、いくらか脳内の酸化を抑制できるでしょう。なお、食材を選ぶ際は、犬にとって毒となる食品と必ず照合してください。 犬の毒となる食べ物
  • 抗酸化作用を持ったフード  近年は、フードの中にあらかじめ抗酸化物質を含んだものも多数出回っています。多少割高になりますが、通常のフードに比べていくらか脳内の酸化を抑制してくれるでしょう。自己判断で選ぶのが不安な場合は、一度獣医さんに相談したり、獣医さんが進めるブランドを選ぶというのも手です。 ドッグフード一覧
  • 抗酸化サプリメント  抗酸化フードと同様、抗酸化成分を含んだ栄養補助食品(サプリメント)もたくさん市販されています。通常のフードに混ぜて与えれば、抗酸化作用を期待できます。 サプリメント一覧
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犬の認知症と問題行動

 認知症を発症した犬には、さまざまな問題行動が起こります。以下では、犬が問題行動を見せた場合の適切な対処法について考えていきたいと思います。
 なお近年は老犬ホームなる施設が増えてきています。これは人間の老人ホームを犬に置き換えたものですが、何らかの理由で犬の介護ができない方や、経済的にかなり余裕のある方の選択肢として徐々に普及してきています。頭の片隅にとどめておいても損にはならないでしょう。
問題行動への対処法・目次

トイレの失敗

 認知症に伴う問題行動の中でも頻繁に見受けられるのが粗相、すなわちトイレの失敗です。
 犬が粗相してしまう理由には、認知症のほかに肉体的な要因もかかわっています。まず、膀胱の容量が減っているため、若い頃のように大量におしっこを溜めておくことができません。結果としてトイレに着くまで我慢できず、廊下や床にお漏らししてしまうことがあります。さらに肛門括約筋が弱っているため、うんちを我慢できなかったり、「いきむ」力が弱くなって十分にうんちを出し切ることができず、垂れ流してしまうという事態も生じます。
 飼い主として大事なのは、老犬のトイレの失敗は当たり前という意識を持ち、汚物を目の当たりにしても、感情的になって叱らないことです。なぜなら、叱ってもトイレを覚えてくれるわけではなく、犬に不要なストレスを与えるだけだからです。
 以下では、犬がトイレに失敗しないようにする方法、および失敗してもすばやくリカバリーできる方法について解説します。
犬のトイレの失敗・対処法
  • 室内トイレに慣らす  散歩の途中でおしっこやうんちをすることが習慣化した犬の場合、散歩量の減少に伴い、トイレの機会も少なくなります。かといって急に室内トイレを使えるわけではないため、多くの場合失敗してしまいます。こうした犬を室内トイレに慣らすときは、ペットシーツの近くに、植木鉢など屋外環境を模したものを置いてみましょう。犬が抵抗なくおしっこしてくれることがあります。
  • トイレを増やす  通常1箇所で事足りるペットシーツを、複数の箇所に分散してみましょう。トイレサインが見られたら、すぐに最寄のトイレに連れて行くことができ、その分失敗することもなくなります。
  • ペット用オムツの活用  最近はペット用オムツも市販されていますので、こうしたものを活用するのも手です。出費を安く抑えるため、安価な人間用オムツを切ったりして代用する人もいます。なお、犬のお尻周辺の無駄毛をあらかじめカットしておくと、汚れたときの処置が早く済みます。 犬の医療・介護グッズ 犬のトリミング
  • トイレサインを読み取る  排尿・排便の回数が増えている場合は、犬がどういったタイミングでおしっこやうんちに行きたがるかを記録してみましょう。明確な規則性が見つかれば、犬をトイレに連れて行くタイミングが測りやすくなります。

夜鳴き

 飼い主の心に重くのしかかる問題行動の一つとして夜鳴きがあります。飼い主を睡眠不足にすると同時に、近隣住民に対して迷惑をかけるやっかいな行動ですので、可能な限りの手を尽くして予防に努めたいものです。
犬の夜鳴き・対処法
  • 昼間に寝かさないようにする  犬が夜中に目を覚ましてしまう原因として、昼間に寝すぎているという点が挙げられます。これは認知症に伴う睡眠リズムの変調に起因していますが、昼間の睡眠時間を減らすことで夜中の目覚めを予防できる可能性があります。
     たとえば、昼間のうちに軽い遊びや運動・散歩などをすることで疲労を蓄積し、なるべく眠らないように仕向けるなどです。
  • 飼い主が添い寝して安心させる  犬が夜鳴きする原因としては、孤独に対する恐怖感というものがあります。認知症に伴って心が子犬に戻ると、自分を保護してくれる存在がいない状況に不安を覚え、くんくん鳴いてしまうのです。子犬の声なら小さくて済みますが、成犬の声で鳴くとどうしても音量が大きくなり、時に安眠妨害にもなります。
     犬の夜鳴きの原因が、この「子犬返り」にある場合、飼い主が添い寝してあげることで安心し、それだけで鳴きやんでぐっすりと眠ってくれることがあります。添い寝が難しい場合は、せめて飼い主が見える場所に犬の寝床を移動してあげましょう。
  • 人間のそばに置いてやる  上と同じ理由で屋外犬も「寂し鳴き」をすることがあります。室内犬の場合はクンクン鼻を鳴らすだけかもしれませんが、屋外犬の場合は盛大に遠吠えしてしまうこともあるので厄介です。上記したように飼い主が添い寝してあげることが理想ですが、やむをえない理由でそれができない場合は、玄関の中に入れてあげるなど、極力飼い主の近くにおいてあげましょう。騒音を遮断すると同時に犬の寂しさを紛らわすことができます。また、飼い主の臭いが付いた毛布やいらなくなった服などを与えるのも効果的です。
  • 犬の要求を読み取る  犬が夜中に鳴くのは、認知症でボケたからではなく、飼い主に対して明確なリクエストがあるためかもしれません。空腹、のどの渇き、トイレ、痛みなど、犬が何かを要求していないかどうか、確認してみましょう。

無駄吠え

 無駄吠えに関しては、認知症にかかっていない多くの犬でも問題になっていますので、認知症を発症してしまった犬においては、ますます厄介な問題と言えるでしょう。若い犬ならしつけをすることによって解決するかもしれませんが、老犬の場合、そうした解決法はどうしても難しくなります。
犬の無駄吠え・対処法
  • 犬の要求を読み取る  無駄吠えというのは、ひょっとすると飼い主の思い込みかも知れず、犬からすると何らかの明確な要求があって吠えているのかもしれません。空腹、のどの渇き、トイレ、痛みなど、犬が何かを要求していないかどうか、今一度確認してみましょう。
  • 犬の気をそらす  認知症にかかった犬は異常な食欲を見せることが少なくありません。飼い主が食事しているとき、「おすそわけちょうだい!」とばかりに、若い頃は決して見せなかった要求吠えをしてくることがあります。こうしたとき、「老い先短いのだから、生きているうちに食べたいものを食べさせてあげよう」とするのも一案ですが、犬の気を紛らすという代替案もあります。
     具体的には、ビニールシートの上におやつを撒き散らす、エサを複数個所に隠して探させる、知育玩具の中に大好きなおやつを入れて与える、食べるのに時間がかかるよう複雑にデザインされた食器におやつを入れるなどです。エサやおやつを食べようと夢中になっている間は無駄吠えをセーブすることができます。
  • 孤独感を解消する  夜鳴きと同様、孤独に対する寂しさが無駄吠えの原因になっていることがあります。これは、認知症に伴って成犬としての脳の抑制力がなくなり、気持ちが子犬に戻ってしまうために生じる現象です。
     無駄吠えの原因が寂しさにある場合は、飼い主がなるべく犬のそばにいてあげることが解決になります。犬を外で飼っている場合は室内飼いに切り替え、すでに室内で飼っている場合は、常に飼い主が視界に入るような距離においてあげましょう。

徘徊

 徘徊(はいかい)とは、明確な目的が無いにもかかわらずうろうろ動き回ることです。万が一家の外に出てしまうと、自力で帰ってくることが難しいため、飼い主が事前に犬の行動を管理しておく必要があります。
犬の徘徊・対処法
  • 室内環境の見直し  若い頃は興味を示さなかった場所でも、脳が老化したことによってうろうろと入り込むことがあるかもしれません。毒物、有毒植物、誤飲物など、犬にとって危険なものを今一度見直し、家の中から一掃しましょう。こうした危険物を事前に取り除いておけば、少なくとも家の中で徘徊しても、粗相以外に大きな問題が起こらなくなります。 犬にとって危険な毒物 犬に危険な有毒植物 犬の誤飲・誤食リスト
  • サークル・ケージに入れる  犬をサークルやケージなどに入れ、自由に動き回ることができなくする方法です。しかしこの方法は犬の運動不足を招きやすく、最悪の場合は認知症を加速させてしまうことがありますので、最後の手段として考えたいものです。
  • 外に出すときは監視する  犬を自宅の庭で遊ばせたりトイレをさせるようなときは、飼い主が必ず監視するようにします。マイクロチップを入れているから安心と思っている人がたまにいますが、マイクロチップにGPS機能はありません。いなくなった犬を追跡するためには、結局人間が走り回って目視確認するしかありませんので、こうした事態に陥らないよう、犬を常に視界に入れて監視する習慣を作りましょう。
  • 戸締りをしっかり  犬が外に出ることさえなければ、大きな事故に巻き込まれることもありません。飼い主が寝ている間や留守をしている間の戸締りだけはしっかりと行いましょう。
  • 迷子対策  万が一犬が外に逃げ出して迷子になってしまった場合は、自力で帰ってくる可能性がないといっても過言ではありません。帰巣能力が低下しているということもありますし、フラフラと道路に飛び出して交通事故にあってしまうということもあるからです。また、見つけた人が保健所に連絡してしまうということもあるでしょう。最善は、そもそも犬を外に出さないということですが、万が一に備えて迷子対策を予習しておくのが無難です。詳細は以下のページにまとめてあります。 迷子犬の探し方

攻撃行動

 脳細胞数が減少して認知症にかかった犬は、脳による制御能力が低下してしまいます。結果として、攻撃行動に対する抑制が効かず、人間や他の動物に噛みついてしまうという事態も起こりえます。
犬の攻撃行動・対処法
  • いきなり触らない  まずは犬にいきなり触らないよう心がけましょう。理由は、驚いた拍子に噛みついてしまうことがあり、また関節炎などの持病を抱えて慢性的な痛みに耐えているような場合は、常に気が立っていることがあるためです。
     犬に触るときは犬の見える位置に立つか、音によってこちらの存在に気づかせた上で触りましょう。
  • 子供や動物を近づけない  感情のコントロールをつかさどる脳の部位が変性してしまうと、犬の性格自体が変わってしまい激しい攻撃性を示すことがあります。犬の攻撃性が激しいときは、予防策として子供や動物をそもそも近づけないという配慮も必要です。しつけによる回復することが難しいためにとる窮余の策ですが、人に噛みついて訴訟問題に発展するよりはましでしょう。
  • 犬が噛みつくタイミングを知る  犬が闇雲に噛みつこうとするのではなく、ある明確な引き金があって攻撃性を見せるような場合は、一体何がきっかけになってそのような行動をとるのかを調べて見ましょう。食器を取り上げる瞬間、マッサージをやめた瞬間、足やおなかを触ろうとした瞬間など、犬の攻撃性を高めてしまう特定の原因が見つかるかもしれません。原因が見つかったら、犬の気を他のものそらせた上で目的の行動を取ってみましょう。たとえば、犬の気をおやつにひきつけているうちに、エサの入った食器を片付ける、などです。

寝たきり

 脳の内で延髄や脳橋などを含む脳幹部が衰えると、運動能力が著しく低下してしまいます。具体的には両前足の麻痺、両後足の麻痺、左右どちらか一方だけの麻痺、四肢麻痺などです。また心臓や呼吸器系にも影響を及ぼし、常にあえぎ呼吸するなどの変化をもたらします。こうした状態に陥った犬はどうしても寝たきりになることが多いため、飼い主はそれに応じた介護の仕方を学んでおく必要があるでしょう。
犬の寝たきり・対処法
  • 散歩補助グッズを活用する  足腰の弱った犬のための各種補助グッズを用いれば、足に障害があっても多少の散歩をすることができるかもしれません。具体的には、犬用車椅子、後足サポートハーネスやベスト、後足がぶらぶらして引きずってしまう犬のための固定ブーツなどです。すでに歩くのが困難になった小型犬の場合は、カートに入れて外の景色を見せるだけでも脳への刺激になります。 犬のお出かけグッズ
  • 床ずれに注意  床ずれとは、体の一定部位に圧力が加わることで血流が悪化し、その部位の細胞が広範囲にわたって壊死(えし)を起こすことです。寝ている時間が多いこと、寝床が固いこと、中~大型犬や肥満で体重が重いこと、などの要因で発症リスクが高くなります。発症部位は体重のかかりやすい骨の突出部位で、具体的には肘、膝、尻、脚の側面です。
     床ずれ対策は、犬を緩衝性の高い柔らかいベッドに寝かせること、および2~3時間おきに寝返りを打たせることです。犬が自発的に体位を変えてくれれば問題ないのですが、体が衰弱して寝返りさえ打てない犬の場合は、飼い主が手を貸して体をひっくり返してあげる必要があります。飼い主に力が無かったり超大型犬の場合は、体の下にマットレスを敷いておき、その片側を上に引き上げるようにすればゴロンと転がってくれます。最近は老犬介護用マットレスなども市販されていますので、こうしたグッズの利用も考慮に入れましょう。 犬の医療・介護グッズ
  • 体温管理をしっかりと行う  寝たきりになるほど体力の低下した犬は、多くの場合うまく体温調整ができません。犬が不快感を抱かないよう、飼い主がしっかりと体温管理を行いましょう。
     暑いときは直接風が当たらないような高い場所に犬を移動してエアコンを効かせたり、逆に寒いときは手の先や足の先にサポーターを装着して温め、ペットヒーターや毛布などで体温の喪失を防ぎます。その他細かい注意点もありますので、以下のページもご参照ください。 体温調整力の低下した犬の介護
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