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老犬の病気

 犬の病気を早期発見するヒントや、病気にかかってしまった老犬と暮らすときの注意点などをまとめました。飼い主の側でできる努力は、後悔しない程度にやっておきましょう。

老犬のかかりやすい病気

 以下では老犬のかかりやすい病気を一覧リストでまとめました。最もかかりやすいのは肥満ですが、これは飼い主自身が「肥満=病気」という認識をもっていないことが一因になっています。また、ここに載っていない病気に対するリスクが無いというわけではありませんので、症状一覧チェックを週に1度くらいのペースで日常的に行うことが何より大事です。
老犬のかかりやすい病気
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老犬の健康診断

 犬の症状一覧は、あくまでも素人である飼い主が行う簡易チェックです。疾患にかかっているかどうかをいち早く発見する手がかりにはなりますが、犬が実際に発症しているかどうかを判断する際は、やはり獣医さんによる診察・検査・診断が必要となります。

老犬の検査項目

 一つの目安としては、飼い犬が高齢期に差し掛かってからは半年に1回のペースで、かかりつけの獣医さんの元で健康診断を受けるというものがあります。以下は、犬の体型別に見た「高齢」のスタート時期です。体重は全て、太りすぎでもやせすぎでもないときの値を前提としています。
犬の体型別に見た高齢期
  • 9kg未満→8歳以降
  • 9~23kg未満→7歳以降
  • 23~54kg未満→6歳以降
  • 54kg以上→4歳以降
 体内の微妙な病変は、人間の五感だけではとらえることができません。血液検査や精密機械を用いれば、そうした病変もいち早く発見することができます。また健康診断と同時に、ワクチン接種の相談も行うようにしましょう。以下は、健康診断で行われる一般的な検査項目です。 老犬の飼い方(文一総合出版)
検査項目と正常値
  • 血中の総タンパク量血中の総タンパク量はTPとも呼ばれ、正常値は5.4~8.2g/dlです。
    数値が正常値より高い場合は高たんぱく血症、脱水、腫瘍、感染症、逆に低い場合は肝臓疾患腎臓疾患、栄養不良などの可能性を示唆します。
  • 血中アルブミン値 血中アルブミン値はALBとも呼ばれ、正常値は2.5~4.4g/dlです。
    数値が正常値より高い場合は慢性の感染症や脱水、逆に低い場合は栄養不良、消化不良、慢性腎不全肝硬変寄生虫症、ストレス性疾患などの可能性を示唆します。
  • AST ASTはGOTとも呼ばれ、正常値は14~45U/lです。
    数値が正常値より高い場合は慢性肝炎肝硬変、筋肉疾患、急性心筋梗塞などの可能性を示唆します。
  • ALT ALTはGPTとも呼ばれ、正常値は10~118U/lです。
    数値が正常値より高い場合は肝硬変、脂肪肝、肝胆道疾患などの可能性を示唆します。
  • ビリルビン ビリルビンはBILとも呼ばれ、正常値は0.1~0.6mg/dlです。
    数値が正常値より高い場合は黄疸、溶血、肝障害、胆道閉塞などの可能性を示唆します。
  • 尿素窒素 尿素窒素はBUNとも呼ばれ、正常値は7~25mg/dlです。
    数値が正常値より高い場合は下痢、嘔吐、発熱、尿路閉塞、慢性腎不全尿毒症、脱水、糖尿病、消化管出血、栄養不良、逆に低い場合は肝硬変尿崩症、妊娠、低タンパクなどの可能性を示唆します。
  • クレアチニン クレアチニンはCREとも呼ばれ、正常値は0.3~1.3mg/dlです。
    数値が正常値より高い場合は急性糸球体腎炎腎結石腎盂腎炎、脱水、ヤケド、尿路閉塞、逆に低い場合は筋萎縮小、尿崩症などの可能性を示唆します。
  • 心臓の検査 心電計、超音波によるエコースキャン、レントゲンなどで心臓の状態を検査します。
  • レントゲン検査 筋骨格系疾患のほか、内臓疾患を検査するときにも用いられます。
  • 尿検査 テストペーパーを用いて、朝一で出た尿を検査します。尿タンパク、尿糖、尿中ビリルビン、潜血などをチェックします。

高齢犬と老齢犬の違い

 2016年、老犬たちの年齢層を「高齢」と「老齢」とに分け、両グループの検査結果にどのような違いが見られるのかという調査がベルギーで行われました(→詳細)。犬の区分は「小型犬=9kg未満」、「中型犬=9~23kg未満」、「大型犬=23~54kg未満」、「超大型犬=54kg以上」で、以下は主な結果です。こちらの調査では小型犬の高齢期を9歳からにしています。
高齢犬と老齢犬の検査値一覧
犬の体重別に見た高齢犬と老齢犬の分類基準  検査項目の参照値(正常範囲)が当ページで紹介した値と異なる理由は、元データとして用いた犬たちの犬種や年齢が異なるためです。同じ理由により、国、病院、検査機関によって正常範囲の数値が微妙に異なるという現象もしばしば起こります。
 調査を行ったベルギーのチームは、若い犬から取った単一の参照値を絶対基準として用いるのではなく、高齢犬には高齢犬専用の、老齢犬には老齢犬専用の参照値があったほうがよいと言っています。つまり若い犬を元にして決めた「正常範囲」をそっくりそのまま老犬に当てはめてしまうと、正常な老化現象まで病気として誤解してしまう可能性があるということです。これは獣医学における今後の課題かもしれません。

健康診断の重要性

 一見健康そうな老犬でも、飼い主によって見過ごされている病気を密かに抱えている可能性が高いようです。例えば過去に行われた調査では、以下のような傾向が確認されています。
老犬と病気の見落とし
  • 2007年の調査麻酔をかける前、101頭の老犬(7歳以上)に対して身体検査を行ったところ、これまで知られていなかった病気が30頭において見つかった(→出典)。
  • 2012年の調査臨床上健康なゴールデンレトリバーを対象とした調査では、検査項目中に病気の兆候が確認された割合は54.7%、腹部の超音波検査で異常が見つかった割合は64.2%だった(→出典)。
  • 2012年の調査健康かどうかにかかわらずランダムで選ばれた45頭の老犬を対象として身体検査や尿検査を行ったところ、80%でこれまで気付かれなかった医療上の問題が見つかった(→出典)。
 見過ごされがちな犬の病気を早期発見するためには、飼い主が正常と異常の違いをしっかりと把握すると同時に、老犬の体や動きを日常的にチェックし、異常が見つかり次第すみやかに健康診断を受けることが必要です。 犬の症状一覧
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老犬と薬

 犬が持病を抱えており、獣医さんから定期的に薬を処方してもらっている場合、飼い主が投薬管理を行うことになります。その際、薬の効果を最大限に発揮するため、知っておかなければならない知識があります。

老犬に対する薬の効き目

 犬が年老いてくると、薬が本来持っている薬効が十分に発揮されないという現象もしばしば見受けられます。主な原因は以下です。
老犬に薬が効かない訳
  • 胃液の分泌低下
  • 胃腸の蠕動運動減弱
  • 腸粘膜の細胞数減少
  • 脂肪の増加・筋肉量の減少
  • 肝機能の低下
 「副作用の無い薬は無い」といいますが、若い頃の体の状態を基準にして薬を処方してしまうと、効き目が弱くなったり、逆に強すぎて副作用を引き起こすということも起こりえます。薬を投与した後は安心するのではなく、犬の体調の変化をよく観察するようにしましょう。
 なお、犬の中毒として最も多いのは人間用の薬を誤って投与してしまうというものです。投薬するときは必ず動物用の薬であることを確認しましょう。 犬にとって危険な毒物

投薬のタイミング

 獣医さんから薬を処方されると、同時に投薬のタイミングについて指示が出ます。このタイミングを間違えたりおろそかにしてしまうと、薬の持つ効果が最大限に生かされないどころか、時として副作用を引き起こします。投薬指示は必ず守るようにしましょう。
一般的な投薬のタイミング
  • 食前(しょくぜん)  食前とは食事を与える30分前に薬を飲ませるという意味です。制酸剤や胃粘膜保護薬、糖尿病用の薬などの多くは食前指示が出されます。
  • 食後(しょくご)  食前とは食事を与えてから30分後に薬を飲ませるという意味です。この指示が出される薬剤の多くは、溶けると胃を刺激する性質があります。ですから、薬の内服に先立って食事を胃に入れておけば、後から入った薬が食事と混ざることにより、胃に対する刺激が緩和されるというわけです。なお、この指示を守らないと急性胃炎などを引き起こしますので注意してください。
  • 食間(しょっかん)  食間とは食事を与えてから2時間後に薬を飲ませるという意味です。この種の薬剤は胃に対する刺激が少ないため、胃に何も入っていないときの方が早く薬効を示します。胃痛や吐き気に対する薬の多くは、食間薬です。
 また、本来与えるべき薬を忘れてしまったため、次のタイミングで2倍の量を投薬するというのは大間違いです。薬は適量のとき、初めて効果を発揮します。2倍にしたところで効果が2倍になるわけではなく、多くの場合副作用による苦痛を引き起こすだけです。投薬を忘れてしまったら、その分はいさぎよくあきらめ、その後同じ間違いをしないよう心がけるのがベストです。

薬の保管方法

 薬には適切な保管方法というものがあります。以下は代表的な例ですが、指示の有無にかかわらず、キッチン周りやお風呂場付近など、湿度や温度の高い場所での保管は避けるようにします。
薬の保管方法
  • 冷蔵保存4度以下での保存/冷蔵庫が無難
  • 冷所保存15度以下での保存/冷蔵庫が無難
  • 室温保存1~30度での保存/室内の直射日光の当たらない場所
  • 冷暗所保存15度以下で、太陽光の届かない場所での保存/冷蔵庫が無難
 なお薬に使用期限が定められている場合は、必ず期限内に使い切るようにします。期限切れのものは薬効成分が薄れていますので、あきらめて廃棄しましょう。また、期限が書かれていない薬でも、1年を経過したものは交換したほうが無難です。
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犬に薬を飲ませる方法

 愛犬が持病を抱えている場合、時に、飼い主が自宅で投薬する必要性が出てきます。犬になるべくストレスを与えない方法を事前に知っておくと安心です。

犬に錠剤を飲ませる場合

 まずは錠剤を犬に飲ませる方法です。カプセル薬を破り、中の薬剤だけを与える人もいますが、これはやめたほうがよいでしょう。理由は、薬が口や食道の粘膜を直接刺激し、犬に不快感を与えてしまうことがあるためです。「薬=嫌なこと」と記憶されると、以後の投薬が大変になりますので、なるべくそのままの形で投薬するように心がけます。また錠剤の種類によっては、吸収速度を保つために砕いてはいけないものもあります。固形薬を粉末薬にする場合は、自己判断で行うのではなく、必ず事前に獣医さんの確認を取るようにしてください。
犬にうまく錠剤を飲ませる
  • 口に直接入れる  素直に薬を飲んでくれる犬の場合、直接口の中に薬を投げ入れるという方法が最も簡便です。
     基本的なやり方は、まず片方の手で犬の上唇をつかみ、上に向かせます。もう一方の手で下顎を開き、そのまま握っていた錠剤を、舌のなるべく奥の方に乗せましょう。薬が口の中に入ったのを確認したら、犬の顎を閉じ、優しくのどをさすります。鼻先に息をフッと吹きかけると、飲み込んでくれることもあります。
     薬がのどの奥に引っかかり、後で吐き出してしまうこともありますので、投薬後は少量の水を飲ませ、確実に錠剤が食道を通過するようにしましょう。 老犬ののどにダイレクトで薬を置く方法
  • ピルガンを用いる  ピルガンとは、錠剤をのどの奥の方に置くための注射器のような道具です。口の中に指を入れると噛んでしまう犬に対して用います。基本的な使い方は、上記「口に直接入れる」の指をピルガンに置き換えたものです。 錠剤をのどの奥に置くための特殊器具・ピルガン
  • ピルポケットを用いる  ピルポケットとは、錠剤を包んで臭いをカムフラージュする袋状のエサのことで、オブラートをうんと厚くしたものとお考えください。市販されているものもありますし、チーズやソーセージ(塩分の低いもの)など、においが強い食品で代用することもできます。
     やり方は、まずごほうびを与えて犬の気を引きます。「おいしいものがもらえる!」と犬が釣られてきたら、さりげなくごほうびと薬を一緒に与えてみましょう。薬の存在に気づかずそのまま食べてくれれば大成功です。最後にもう一度ごほうびを与え、薬を飲むという状況を犬にとって楽しいこととして覚えこませます。 錠剤をおいしいエサで包んでごまかすピルポケット

犬に粉薬を飲ませる場合

 病院で処方される粉薬のパッケージは横幅が広いため、そのまま犬に与えても、人間が風邪薬を飲むようには飲んでくれません。
犬にうまく粉薬を飲ませる
  • シュガースティックを用いる  コーヒー用のシュガースティックを空にし、その中に粉薬を入れましょう。注ぎ口が小さい分、傾けたときの狙いが定めやすくなります。
     基本的なやり方は、犬の口の横から、頬と歯肉の間に注ぎ込みます。
  • ピーナツバターに混ぜ込む  粉薬をピーナツバターに練りこんで舐めさせるという方法もあります。
     犬が自発的に舐め取ってくれやすくなり、また、投薬自体を楽しい体験として記憶してくれます。自発的に舐めない場合は、飼い主が指で掬い取って頬の内側に塗りこみましょう。ただしキシリトールを用いている商品は絶対に使用しないででください。低血糖発作で死亡してしまう危険性があります。
  • 注射器を用いる  粉薬を直接口に投与することが難しい場合は、砂糖水に溶かして注射器で投薬します。甘いシロップに薬を混ぜ込み、注射器などで犬のほほの内側に投入する方法  水よりも砂糖水の方がよいのは、猫と違って犬は甘味を感じることができるため、自発的に飲んでくれやすくなるからです。また薬を飲むという状況を犬にとって楽しい体験にするという狙いもあります。
     注射器に砂糖水と粉薬を入れ、犬の頬の内側辺りに注入しましょう。通常はそのまま飲み込んでくれます。注射器はスポイトや少し大きめのおしょう油入れで代用しても構いません。
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