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フレンチブルドッグの脊柱変形(脊柱後弯症)はヘルニアの発症リスクを高める

 150頭を超えるフレンチブルドッグを対象とした調査により、脊柱のカーブ異常がヘルニアの発症リスクを高めていることが明らかになりました(2018.1.12/イギリス)。

詳細

 調査を行ったのは英国王立獣医大学のチーム。2010年11月から2016年9月の期間、大学付属の小動物病院を受診したフレンチブルドッグを「頚椎ヘルニアがあるグループ」(ハンセンI型 | 30頭)「胸腰椎にヘルニアがあるグループ」(ハンセンI型 | 47頭)、「脊髄や整形外科的な症状の見られない無症候グループ」(101頭)とに分け、脊柱カーブの異常とヘルニアとの間に何らかの関係性があるかどうかを検証しました
脊柱カーブの異常
【脊柱側弯症(Scoliosis)】
脊柱を水平面で見たとき(背中から見た時)に歪んでいる状態。明確な基準がないため、診断画像を見てまっすぐではないときに側弯症と分類された。
【脊柱後弯症(Kyphosis)】
脊柱を垂直面で見たとき(横から見た時)に凸型に歪んでいる状態。コブ角10度以上が診断基準とされた。コブ角=目的とするカーブの中で一番傾いている2つの椎体が形成する角度
 得られたデータを統計的に計算したところ、以下のような関係性が確認されたと言います。
脊柱変形とヘルニアの関係
  • 脊柱後弯症のある犬では脊柱のどこかにヘルニアを抱えているリスクが1.98倍
  • 脊柱後弯症のある犬では特に胸腰椎ヘルニアの有病率が高い
  • 脊柱側弯症とヘルニア有病率との間に関連性は無いが尾側腰椎にヘルニア抱えている割合が高い
  • 年齢が1年増えるほど脊柱のどこかにヘルニアを抱えているリスクが3%増加する
  • 側弯部や後弯部自体にヘルニアは無い
Evaluation of the influence of kyphosis and scoliosis on intervertebral disc extrusion in French bulldogs
Inglez de Souza et al. BMC Veterinary Research (2018) 14:5 DOI 10.1186/s12917-017-1316-9

解説

 過去に行われた調査では、フレンチブルドッグをエックス線撮影した時、たとえ神経症状示していなくても78~93%では先天性の脊椎奇形が見られると言います。 犬の脊椎奇形~正常・半椎・楔状椎  今回の調査でも、何ら神経症状を示していなかったフレブル101頭中90頭(89%)で脊椎の奇形が見られたといいます。そして1ヶ所だけの個体は20頭、複数箇所に抱えた個体は70頭だったとも。さらに脊柱全体で見た時、無症候性の後弯症は33頭(33%)、無症候性の側弯症は21頭(20.8%)で確認されたそうです。こうしたデータから、フレンチブルドッグは何らかの症状を示していようといまいと、ほぼ確実に脊椎に奇形を持っており、およそ半分は脊柱のカーブに異常を抱えているということが言えそうです。 フレンチブルドッグの9割近く脊椎奇形、半分近くは脊柱変形を潜在的に抱えている  脊柱奇形やヘルニアの原因としては軟骨異形成 が関与しているのではないかと推測されています。しかし、フレンチブルドッグ同じように軟骨異形成を抱えるパグブルドッグでは、フレンチブルドッグほどヘルニア発症率は確認されていません。こうした事実から調査チームは、フレンチブルドッグ特有の遺伝的な特性があると推測しています。
 不思議なことに、脊柱カーブの異常部位自体にヘルニアは見られず、主としてそこから尾側の椎間板にヘルニアが見られました。発症メカニズムとしては「脊椎奇形→脊柱のカーブ異常→バイオメカニクスの乱れ→特定の椎骨へのストレス増加→繊維輪の破損とヘルニア」といったものが想定されています。過去に行われた調査では脊柱後弯症と若年性の関節症との関連性、およびコブ角35度を超えると神経系の症状を示す割合が高くなといった関連性が指摘されています。フレンチブルドッグは将来的に脊柱変形に起因する神経症状を発症するかもしれない 今回の調査でも無症候グループの中にコブ角35度を超える個体が含まれていましたので、たとえ今は症状示していなくても、将来的には何らかの神経症状を示す可能性が高いと考えられます。症状としては歩いているときの腰の振り方が左右アンバランスとか足を引きずるといったものがあります。飼い主は散歩中によく観察しておいたほうがよいでしょう。 犬の脊椎奇形・脊柱変形 犬の椎間板ヘルニア