トップ2018年・犬ニュース一覧4月の犬ニュース4月4日

ドッグランにおけるお尻のにおい嗅ぎと鼻先の挨拶は犬世界の基本マナー

 ドッグランに来た犬を対象とした観察調査により、入場してから6分間における行動傾向が明らかになりました(2018.4.4/カナダ)。

詳細

 調査を行ったのはカナダにあるニューファンドランド・メモリアル大学のチーム。2007年6月から8月の期間、セント・ジョン市にあるクイディ・ビディのドッグラン(45×65m)を対象とし、人間に制御されていない犬たちが見せる自然な交流行動を観察しました。
 観察対象となったのは69頭の犬達(オス40頭+メス29頭 | 未手術12頭 | 年齢中央値1.5歳 | 10kg以上78% | ミックス55%)。個々の犬に関しノーリードになってからの400秒間(6分40秒間)を録画し、25日間かけて50時間分の行動データを集めました。 ドッグラン入場後6分間における犬のタイムバジェット  その結果、400秒間における「独りの時間」が49.7± 2.3%、「犬との交流」が39.6± 2.3%「人間との交流」が6.7± 0.8%、「複合交流」が3.0±0.4%という内訳になったといいます。また犬との交流は時間の経過とともに59%から27%に減少したのに対し、独りの時間は34%から 60%に増加したとも。なお「交流」の最低条件は「相手の人や犬から1m以内の位置にいて何らかの接点を持った」という点です。
Social behaviour of domestic dogs (Canis familiaris) in a public off-leash dog park
Howse MS, Anderson RE, Walsh CJ, Behavioural Processes(2010), https://doi.org/10.1016/j.beproc.2018.03.016

解説

 犬との交流をさらに「鼻先の交流」「接触のない交流」「接触のある交流」「追いかけっこ」に細分したところ、以下のような内訳になったといいます。
ドッグランでの犬の行動(開始6分)
  • 鼻先の交流自分から99% | 相手から100%
  • 接触のない交流自分から87% | 相手から77%
  • 接触のある交流自分から51% | 相手から48%
  • 追いかけっこ自分から55% | 相手から78%
 「鼻先の交流」に関しては自分から始めるパターンにしても、相手から受ける方にしてもほぼ100%の確率で出現することが明らかになりました。相手の頭部に鼻先を近づけるという行為(自分から94% | 相手から99%)は友好関係の証、相手の肛門近くに鼻先を近づけるという行為(自分から91% | 相手から99%)は匂いを通した個体情報の受け渡しという意味があると考えられます。人間界ではろくに挨拶をしない人がいますが、犬の世界においては少なくとも最低限の礼儀くらいは守るようです。 ドッグランに入場して最初の5分間のうちに鼻による挨拶行動が見られる  「接触のない交流」においては「お尻を相手から遠ざける」(自分から48% | 相手から33%)という行動が多く観察されました。相手の犬が鼻先を近づけてクンクン嗅ぎ回るのを嫌がった結果なのだとすると、「軽い挨拶はするけどしつこいのはイヤ」といった感覚があるのかもしれません。人間だと「見知らぬ人とのハグ」に近いでしょうか。そういう文化がないと驚いて後ずさってしまいます。
 「接触のある交流」では「前足で頭部を触る」(自分から28% | 相手から16%)、「前足で体を触る」(自分から25% | 相手から32%)、「口を大きく開けてぶつける」(自分から16% | 相手から22%)、「レスリング」(自分から22% | 相手から22%)などが多く観察されました。一方「マウント」(自分から4% | 相手から4%)、「押し倒し」(自分から3% | 相手から10%)、「押さえつけ」(自分から0% | 相手から1%)といった行動はそれほど多くないようです。頻度が少ない行動に関しては、敵対的な関係に発展するかもしれないという危険性を本能的もしくは学習を通してわかっているのかもしれません。社会化期をどう過ごしたかによって結果は変わってくるでしょう。
 「独りの時間」においては排泄行動(排尿もしく排便)が62%という高い確率で観察され、特に年長の犬とオス犬で顕著でした。この傾向は、過去にドッグラン以外の場所や野犬を対象として行われた調査でも確認されていますので、ある程度の普遍性を持っているのかもしれません。ドッグランにおける排泄物処理のルールはまちまちですが、かなりの確率で地面が汚れていると考えられますので「寝転がって背中をクネクネする」といった行動が見られた場合は、家に帰ってからしっかり綺麗にしてあげる必要があるでしょう。 ドッグランの中で犬が排泄行動する確率はかなり高い  50時間の観察データの中で攻撃的・敵対的な行動はほぼ皆無でした。この事実は過去に行われた調査結果とも一致します(Ottenheimer Carrier et al., 2013; Shyan et al., 2003)。ドッグランにおいて重大な咬傷事故につながる危険性は低いと考えられますが、小型犬と大型犬が一緒に遊べるフリーエリアにおいては、相手の犬に危害を加えようと言う意図がなくても小型犬が怪我を負ってしまう恐れがあります。専用エリアに区画されているときはそちらを使ったほうが無難でしょう。 犬の散歩のマナー 犬がお尻の匂いをかぐ