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犬を車から降ろすときジャンプさせてはいけない

 車のラゲッジスペース(荷室)から飛び降りるという何気ない行動が、犬の前足の受傷リスクを高めているかもしれません(2018.4.18/イギリス)。

詳細

 調査を行ったのはイギリスにあるHartpury University Centreのチーム。車の後部にあるラゲッジルーム(荷室, ラゲッジスペース)から飛び降りるとき、犬の前足にどの程度の衝撃が加わっているのかを調べるため、感圧装置を用いた実験を行いました。
 実験に参加したのは体高が43cm以上ある15頭の犬たち。平均年齢5.9歳、オス8頭、平均体重22.3kg、前足の平均長57cmで、椎間板ヘルニアの危険性があることから骨軟骨異形成の犬種(短頭種やダックスフントなど)は除外されています。55cm、65cm、75cmという3つの異なる高さから感圧装置の上に飛び降り、前足に瞬間的にかかる圧力の最大値を計測したところ、以下のようなデータが取れたと言います。
高さと着地時の最大圧力
  • 55cm→27.35±4.14N/kg
  • 65cm→30.84±3.66N/kg
  • 75cm→34.12±3.63N/kg
 高さが55cmから65cmに上がった場合12.8%、65cmから75cmに上がった場合10.7%の圧力増加が見られました。こうした結果から調査チームは、飛び降りる時の高さと筋骨格系の怪我との明確な関連性が証明されたわけではないが、犬を車に乗せて頻繁に外出する家庭においては、ラゲッジルームから飛び降りることによって前足に怪我を負うリスクが高まる可能性を否定できないとしています。
Peak forelimb ground reaction forces experienced by dogs jumping from a simulated car boot
David Pardey et al., Veterinary Record (2018), doi: 10.1136/vr.104788

解説

 車のラゲッジルームから飛び降りたときの衝撃の最大値は、75cmから飛び降りた時に計測された42.2N/kgでした。これは過去にハードルを飛び越えた犬で計測された「45N/kg」とほぼ同じ値です。こうした事実から、車の後部スペースから飛び降りるという何気ない動作が犬の前足にかなりの負担をかけている可能性がうかがえます。 車の後方スペース(ラゲッジルーム)から飛び降りる行為は犬の前足に相当の負担をかけている  さらにドライブ中はずっと横になっていることが多いため、ウォーミングアップが不十分な状態です。この状態でいきなり強い衝撃を受けると、柔軟性を欠いた腱や靭帯に強い力がかかり、ミクロからマクロの断裂を招いてしまうかもしれません。馬を対象とした調査では、飛び降りる場所が高ければ高いほど前足の腱にかかる力が強まると報告されていますので、犬においても同様のメカニズムがあると考えるのが妥当でしょう。 18mの高さから深さ3.5mの水面に向かって飛び込む馬  今回の調査に参加したのは体高が43cm以上の比較的大きな犬たちでした。しかし日本国内の一般家庭で飼育されている小型犬においても飛び降りる時のリスクは同じです。さすがに車の荷台から飛び降りるという事はないかもしれませんが、家庭内においてはソファやベッドから飛び降りるといった状況が頻繁に出現します。さらに「掃除がしやすい」という理由でカーペットが敷かれていない場合、床面がツルツルです。高い場所からこうした滑りやすい面に飛び降りると、着地した時の衝撃がおかしな方向に変換され、前足の腱や靭帯に怪我をするリスクが高まってしまうでしょう。中にはこうしたリスクを全く理解しておらず、犬をわざわざソファからジャンプさせるような飼い主もいるようです。 リスク意識のない飼い主は犬を高い場所からジャンプさせようとする  動物病院、公園、ドッグラン、キャンピング場、ペットホテルなどに行く時、犬を車のラゲッジスペースに乗せることがあるかもしれません。犬を車から降ろす時は、飼い主が抱っこしてあげたりペット用スロープを用いることが推奨されます。また家庭内においては、犬が高い場所に登れないような家具のレイアウトが望まれます。それが難しい場合は、少なくとも高さのある場所の周辺にクッション性が高い敷物を用意し、万が一犬が飛び降りても強い衝撃が加わらないようにしてあげましょう。 犬の抱っこのしつけ 犬が喜ぶ部屋の作り方 犬を車から降ろすときは年齢にかかわらずペット用のスロープを用いて