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ブルドッグは歩くときの体重の掛かり方が左右でバラバラ

 飼い主が健康とみなしているブルドックの歩き方を調べてみたところ、ほとんどの犬で左右の大きなアンバランスが確認されました(2017.11.10/ブラジル)。

詳細

 調査を行ったのはブラジル・サンパウロ大学のチーム。国内でペットとして飼育されているブルドック30頭を対象とし、歩いている時の荷重をリアルタイムでモニタリングできる「Tekscan®」と呼ばれる計測機器を用いて歩様検査を行いました。犬たちの基本データはオス犬18頭、平均体重25.6kg、平均年齢3.6歳というものです。 Tekscanを用いた犬の歩様検査の様子  歩行速度を秒速0.8~1.2mに保った上で1頭につき5回のテスト歩行を行い、得られたデータを平均化したところ、「PVF」(垂直方向にかかる体重のピーク値)、「VI」(垂直方向にかかる力)、「ST」(足が接地している時間)に明白な左右差は見られなかったものの、「SI」(対称性指数=数字が大きいほど左右非対称)に関しては前足が9.8 ± 7.4%、後足が19.8 ± 19.5%という大きな値を示したといいます。要するに左右によたよた揺れながら歩いているということです。
 こうした結果から調査チームは一見健康そうに見えても、ブルドックは何らかの整形外科的な疾患を抱えている可能性が高いとの結論に至りました。犬の歩行異常を認識していた飼い主は16.7%しかいなかったことや、股異形成を抱えた犬とそうでない犬との歩き方に数値上の大きな違いが見られなかったことから、障害や痛みを我慢しながら生活しているものと推測されます。
Kinetic gait analysis in English Bulldogs
Aristizabal Escobar et al. Acta Vet Scand (2017) 59:77, DOI 10.1186/s13028-017-0344-6

解説

 調査への参加条件は、過去4週間抗炎症薬の投与を受けておらず、身体検査で犬に痛みや不快感の明白な兆候が見られないというものでした。にもかかわらず、調査後にレントゲン撮影を行ったところ、全頭(100%)において両側性の股異形成の所見が見つかったと言います。内訳は軽度が66.7%、中等度が16.6%、重度が16.6%というものでした。さらに調べを進めた所、股異形成以外の疾患も数多く見つかりました。具体的には以下です(複数回答あり)。
ブルドッグの整形外科疾患
  • 両側性膝蓋骨脱臼=25.0%
  • 片側性膝蓋骨脱臼=20.0%
  • 肘関節異形成=20.0%
  • 股関節と膝関節変形性関節症=23%
  • 肘関節の変形性関節症=10.0%
 整形外科的疾患を抱えていない犬の対称性指数は0.3~9.6%とされています。それに対しブルドッグでは前足が9.8 ± 7.4%、後足が19.8 ± 19.5%という極めて大きな値を示しました。潜在的なものであれ顕在的なものであれ、股異形成を代表格とする様々な整形外科的な疾患が、この犬種の歩き方を左右非対称にしているものと推測されます。 犬の筋骨格系の病気 1800年台前半からの200年間で、ブルドッグの姿は大きく様変わりした  「Orthopedic Foundation for Animals」(OFA)のデータによると、ブルドッグは股異形成を発症しやすい犬種のトップとされています。股関節や肘関節の形成不全を減らすために疾患撲滅プログラムが実施されている犬種がいる一方、ブルドックに対してはそのような施策が行われず、ブリーダーによる繁殖が野放し状態になっています。ブルドックは整形外科的な疾患のみならず、難産や短頭種気道症候群といった様々な遺伝的疾患を発症しやすい犬種です。カリフォルニア大学デイヴィス校が行った調査でも指摘されているように、犬の福祉を向上させるためには他の犬種から血統を導入し、極端に変形した骨格を元の姿に戻していく必要があるでしょう。 イギリスの象徴犬であるブルドッグに遺伝学者が警鐘 ブルドッグ