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犬の飼い主の多くはペットの体型やドッグフードラベルを正確に読み取れない

 犬の飼い主のうち3~4割はペットの体型やドッグフードラベルを正確に読み取れておらず、これが肥満につながっているという可能性が示されました(2017.6.29/スコットランド)。

詳細

 調査を行ったのは、スコットランド・グラスゴー大学獣医学校のチーム。2014年から15年の期間、スコットランド国内に暮らしている犬の飼い主189名に対してアンケート調査を行い、最終的に174名から有効回答を得ました。得られたデータから、犬の体型や体重に対する飼い主の認識力およびドッグフードの給餌量に対する認識力を評価したところ、以下のような事実が明らかになったといいます。
 犬の体重や体型に関しては、28~38%の飼い主が過小評価、すなわち実際の体重や体型よりもスリムであると誤認する傾向が見られました。「文章」とは体型に関する記述(肋骨が浮いている・腰にくびれがあるetc)だけから飼っている犬の体型を評価すること、「イラスト」とは犬の体型が描かれたイラストだけから飼っている犬の体型を評価することです。
体型・体重評価能力
飼い主がペット犬の体型と体重を評価する能力
  • 文章正解55% | 過大評価17% | 過小評価28%
  • イラスト正解51% | 過大評価11% | 過小評価38%
  • 体重正解48% | 過大評価19% | 過小評価33%
 給餌量に関してはウェットフードにしてもドライフードにしても約4割の飼い主が過小評価、すなわち実際の理想給餌量よりも少なく見積もる傾向が見られたと言います。
給餌量評価能力
飼い主がペットフードのラベルから正確な給餌量を読み取る能力
  • ウェットフード正解49% | 過大評価7% | 過小評価44%
  • ドライフード正解44% | 過大評価14% | 過小評価42%

 こうした結果から調査チームは、犬で見られた38%(BCS4=31%+BCS5=7%)という高い肥満率の背景には、犬の体つきを認識する能力や、ドッグフードラベルの読解力に関する飼い主の個人差があるのではないかと推測しています。

Inaccurate Assessment of Canine Body Condition Score, Bodyweight, and Pet Food Labels: A Potential Cause of Inaccurate Feeding
Philippa S. Yam et al., Veterinary Sciences 2017, 4(2), 30; doi:10.3390/vetsci4020030

解説

 犬の体型や体重を低く見積もるという傾向は、過去に犬や人間を対象として行われた調査でも確認されてる事実です。太っているのにスリムであると評価してしまう心理の背景には、単純に親の贔屓目(ひいきめ)があるのかもしれません。

 一方、およそ4割の飼い主はペットフードラベルをしっかりと把握できず、給餌量を理想よりも低く見積もる傾向が見られました。この現象は、およそ3割の飼い主が自分の犬を「スリムである」と誤認している事実と連動している可能性があります。しかし給餌量が理想量よりも少ないのであれば、犬はどんどんやせていくはずです。しかし今回の調査では、痩せ気味の犬は合計17%(BCS1=0%+BCS2=17%)、太っている犬は合計38%(BCS4=31%+BCS5=7%)という値を示しました。こうした奇妙な逆転現象を生み出しているのは以下のような要因だと考えられます。

犬はなぜ太る?
  • 間食通常の餌の時間以外におやつやご褒美という形で、犬に間食を与えている。
  • 含有カロリー数が間違っているペットフードメーカーが算出したフードの含有カロリー数自体がそもそも間違っている。特にアトウォーター係数を用いている場合。
  • 給餌ガイダンスが間違っているペットフードメーカーの給餌ガイダンス自体が間違っている。例えば、体重1kg当たり80gというざっくりとしたガイダンスしかない場合、エネルギーを消費しない体脂肪に対してまでカロリーを与えるという結果になる。
  • 目分量になっているペットフードメーカーのカロリー数計算や給餌ガイダンスは正しいものの、飼い主がフードを計測するときに間違ってしまう。例えばカップで袋からざっくりすくって与えるなど。
  • 活動レベルを誤認している犬の運動量の目安に関し「少ない」、「中等度」、「激しい」といったざっくりとしたものしか記載されていない場合、飼い主が容易に間違えてしまう。
 上記したような様々な要因によって、たとえ給餌量が理想以下~理想でも、なぜか犬が少しずつ太っていくという現象が起こり得ます。
 犬の体重管理のゴールドスタンダードは、飼い主が日常的に犬の体型を把握し、それに見合ったフードを給餌することです。しかし今回の調査で明らかになったように、飼い主の親心補正が働いて正確に評価できるとは限りません。代替案としては、定期的に体重を計測するというものがあります。日本国内で飼われている犬はほとんどが小型犬ですので、「抱っこして体重計に乗る」といった方法を用いれば比較的簡単に体重をモニタリングすることができるでしょう。あとは目分量でなく、しっかりとキッチンスケーラーを用いてフードの量を計測することです。 犬の肥満 犬のダイエットの基本