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ゴールデンレトリバーのがん発症メカニズムが一部解明される

 ゴールデンレトリバーに多いとされるガンの一種「B細胞性リンパ腫」と「血管肉腫」の発症に関わっていると考えられるDNAの一部が特定されました(2016.1.13/アメリカ他)。

詳細

 調査を行ったのは、アメリカやスウェーデンなどから成る共同研究チーム。人間における「B細胞性非ホジキン型リンパ腫」と「血管肉腫」が、犬における「B細胞性リンパ腫」と「血管肉腫」にそれぞれ対応していることに目をつけたチームは、特に両疾患の発症率が高いことで知られるゴールデンレトリバーを対象とした調査を行いました。
 両疾患を自然発症した犬と健康な犬のDNAを比較したところ、5番染色体上にある2つの遺伝子座のハプロタイプが発症に関わっていることがわかったといいます。「ハプロタイプ」とは、遺伝的に決められている染色体上のDNA配列のことです。研究チームによると、第一の遺伝子座に存在しているリスクハプロタイプ(1種)を保有していると、近くにあるいくつかの遺伝子を働きを抑制し、B細胞性リンパ腫を発症しやすくなる可能性があるとのこと。そして第二の遺伝子座に存在しているリスクハプロタイプ(3種)を保有していると、免疫細胞の活性化に関わる遺伝子に影響を及ぼし、B細胞性リンパ腫と血管肉腫の両方を発症しやすくなるとも。
 こうした知見からチームは、どちらのハプロタイプも、T細胞を介した免疫反応の乱れを引き起こし、両悪性腫瘍の発症率を高める可能性があると推測しています。また疾患を発症した患犬の内、5頭に1頭はこれらのハプロタイプを保有していると見積もられています。 Genome-wide Association Study Identifies Shared Risk Loci Common to Two Malignancies in Golden Retrievers

解説

 アメリカ国内の統計データによると、ゴールデンレトリバーの68%は何らかの悪性腫瘍が原因で命を落とすと言います。また悪性腫瘍の内の13%がリンパ腫で、20%が血管肉腫だそうです。こうした高い発症率の原因は、数少ない種雄を用いてたくさんの個体を繁殖させたからだと考えられています。
 一方、日本におけるデータとしては以下のようなものがあります。数字を見る限り、ゴールデンレトリバーが腫瘍性疾患を発症しやすいという傾向は、国内においても例外では無いようです。
腫瘍性疾患・年齢別有病率
ゴールデンレトリバーと犬全体における腫瘍性疾患の年齢別有病率 犬の悪性リンパ腫 犬の血管肉腫 家庭のどうぶつ白書2014(アニコム損保)