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犬のアニマルセラピー

 アニマルセラピーとは、人のストレスを軽減させたり、自信を持たせたりすることを目的として、人と動物とを触れ合わせる療法です。犬や猫を始め、ウサギ、ウマ、イルカなど、人間と喜怒哀楽を共有できるような情緒性の高い哺乳類が主にセラピーアニマルとして用いられます。以下では動物が人間に対して発揮するヒーリング能力についてまとめました。

アニマルセラピーとは?

 アニマルセラピーは国際的には「Animal Assisted Therapy」(AAT=動物介在療法)と呼ばれ、動物を治療の一部として介在させることにより、患者の身体的、精神的、社会的機能の回復を目的とする医療行為の一種とみなされています。

アニマルセラピーの歴史

 アニマルセラピーの歴史は古く、1792年に設立されたイギリスのヨーク収容所という精神障害者施設で、ウサギやニワトリなどの動物を飼育させて患者たちに自制心を身につけさせるという試みが記録されています。1860年には、ベスレム病院が病棟内での動物とのふれあいを実施し、「入院患者の気力が向上した」という記録を残しています。
精神分析学の創始者・ジークムントフロイトは、患者と接する際、チャウチャウを傍らに座らせていました。これは彼がアニマルセラピーのもつ効果にいち早く気づいていた証拠でしょう。  また、ドイツのてんかん治療施設では、症状軽減のためにペットを用いるという試みがなされ(1867)、アメリカ・ニューヨークの陸軍航空隊療養センターでは、農場で家畜の世話をしたり、公園で動物と接することで気分転換を図ることを積極的に奨励しました(1942)。ちなみに精神分析学の創始者・ジークムントフロイトが、患者にリラックスしてしゃべらせるため、自分の傍らにチャウチャウを座らせて診察に当たったという話は有名です。
 一方、近年におけるアニマルセラピーの発展に尽力したのは、臨床心理学者ボリス・レビンソン(Dr.Boris Levinson)です。1969年から79年にかけて研究を行った彼は、「緘黙(かんもく= 原因は不明だが、明瞭な言語反応が欠如した状態)の子供を犬と遊ばせたところ、子供が自発的に犬と接するようになり、最終的には症状が改善された」と報告しました。ここからアニマルセラピーが広く関心を集めるようになり、今日の発展につながったという経緯があります。

現代のアニマルセラピー

 臨床心理学者レビンソンの研究から発展したアニマルセラピーは、現在「デルタ協会」(Delta Society)が米国内での研究と普及に尽力しています。デルタ協会とはアメリカ・ワシントンに本部を持ち、各地に支部を有する大規模団体で、セラピー・アニマルを介して人々の健康を向上させることを目指しています。また、全てボランティアによって運営されている「National Capital Therapy Dogs,Inc」は、学校や図書館、各種病院やシェルターなどへ赴き、AATを提供しています。
 一方、イギリス国内でアニマルセラピーの普及を行っているのは「スキャス」(SCAS=The Society for Companion Animals Studies, コンパニオン・アニマル研究協会)です。スキャスは1979年に精神科医、心理学者、ソーシャル・ワーカー、獣医師からなる集団によって、人とコンパニオン・アニマルの関係を深めるために創設されました。ここでいうコンパニオン・アニマルとは、一方的にかわいがるだけの愛玩動物、すなわち「ペット」という枠組みを超え、人間に対して癒しを与え、時として生きる支えにもなる大きな存在としての動物を指します。
 国際レベルでは、人と動物の正しい関わり方(Human Animal Interactions=HAI)に関する知識を広めるため、アメリカの「デルタ協会」、イギリスの「スキャス」、そしてフランスの「アフィラック」(AFIRAC=Association Francaise d'Information et de Recherche sur l 'Animal de Compagnie)が中心となって1980年に設立された「アイアハイオ」(IAHAIO=International Association of Human-Animal Interaction Organizations)が有名です。アイアハイオの具体的な活動内容としては、最新の研究、教育や実践の発展、国際フォーラムの開催、人間と動物双方の利益となるような国際レベルの指針作りなどが挙げられます。
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日本におけるアニマルセラピー

 アニマルセラピーという言葉は、実は日本における造語で、医師を始めとする医療従事者が参画して行う動物介在療法(Animal Assisted Therapy, AAT)と、医師を伴わずに動物とのふれあいを通じて生活の質(Quality of Life, QOL)の向上を目指す動物介在活動(Animal Assisted Activity, AAA)、 そして動物の飼育を通じて学童の社会性や協調性、思いやりの心などを育てる動物介在教育(Animal Assisted Education, AAE)などを合わせた日本独自の概念といえます。
 日本国内でアニマルセラピーの普及に努めている団体としては、主に以下のようなものがあります。

日本動物病院福祉協会(JAHA)

 日本におけるアニマルセラピーは、「日本動物病院福祉協会」(JAHA)が中心となって普及に努めています。JAHAは動物病院を中心として1978年に創立された社団法人で、主に人と動物双方の福祉と生活の質の向上、人と動物と環境との調和に貢献することを目的として活動しています。
 JAHAが推進しているボランティア主体のアニマルセラピーは総称して、CAPP活動(Companion Animal Partnership Program =人と動物のふれあい活動)と呼ばれ、高齢者施設、病院、学校などを定期的に訪問しています。犬、猫、ウサギ、モルモットなど、人間と共に暮らしてきたコンパニオンアニマルであればCAPP活動への門戸が開かれており、以下に示すような条件をクリアすれば、参加できる可能性が高いといえます。
CAPP活動に参加する動物の資質
  • 人間大好きで人見知りしない
  • 他の動物たちとも仲良くできる(こわがったり、攻撃したりしない)
  • 見慣れないものや、大きな音なども大丈夫
  • おすわり、マテなどの基本的なしつけができていて飼い主が確実にコントロールできる(犬の場合)
  • 健康管理はバッチリ(定期健診、予防)
  • 生後8ヶ月以上

NPO法人日本アニマルセラピー協会

 「NPO法人日本アニマルセラピー協会」ではセラピー犬と一緒に、高齢者介護施設や学校・幼稚園・保育園などを訪問してアニマルセラピー活動を行っています。日本アニマルセラピー協会の具体的な活動内容は以下です。
日本アニマルセラピー協会の活動
  • 犬を飼う方々のマナー指導活動
  • 犬のしつけ教室
  • 犬に関する全ての相談
  • セラピードッグと共に、各老人ホームの訪問
  • セラピードッグと共に、各養護施設の訪問
  • セラピードッグと共に、各種幼稚園・小学校の訪問
  • 諸外国のアニマルセラピー協会視察
  • 諸外国とのアニマルセラピー協会との交流
  • 1万人のアニマルセラピストの育成
  • 1万頭のセラピードッグの育成
  • 1万人の賛同者(会員)募集活動
  • 犬の育成及びアニマルセラピーに関する資格取得講座、認定試験
 日本においてアニマルセラピーを行う際は、国家試験を通じて免許を取得するのではなく、民間の専門学校などを卒業して資格を認定されるという形が現状です。例えば、「日本アニマルセラピー協会」ではアニマルセラピスト(初級コース受講料・登録料179,000円~)、セラピー犬(受験料・登録料21,300円~)等の認定を行っています。

その他、NPO法人

 その他、NPO法人としてアニマルセラピー活動を行っている団体は以下です。
アニマルセラピーに携わるNPO

アニマルセラピー活動の種類

 アニマルセラピーは主として、老人福祉施設(デイサービス・老人短期入所施設・養護老人ホーム・特別養護老人ホーム・老人福祉センター・老人介護センター)、知的障害者施設、小児病棟、刑務所、精神科病棟などにおいて行われますが、セラピーの実施される場所や訪問形態から、おおむね以下の5つに分類されます。
アニマルセラピー活動の種類
  • 施設訪問型 動物を連れたボランティアなどが老人ホーム、精神科病棟、重度心身障害者施設、ホスピス、エイズ患者施設などを訪問する。
  • 施設飼育型 老人ホーム、小児病棟、刑務所、精神病棟などで動物を飼育することで、情操教育や精神療法、リハビリの動機付けを行う。
  • 在宅訪問型 外出したり自宅で動物を飼えない人の自宅へ、ボランティアやソーシャルワーカーが動物を連れて行く。
  • 在宅飼育型 自宅でペットを飼うこと自体をセラピーとしてとらえる。
  • 屋外活動型 乗馬療法(ホースセラピー, Hippotherapy)やイルカ療法など、患者自らが動物と触れ合うために外に赴く。
 在宅飼育型とはペットを飼う人全員に当てはまるアニマルセラピーといえます。「心臓疾患を有する患者を追跡調査したところ、ペットを飼っていない人の1年後死亡率が28.2%(11人/39人)だったのに対し、ペットを飼っている患者のそれは5.6%(3人/53人)だったという調査結果もあります(Friedmann/1980)ので、ペットを飼っていると長生きできるという風説は、あながち単なる都市伝説ではないようです。
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アニマルセラピーの効果

 1988年にJulia K. VormbrockとJohn M. Grossbergが行った実験では、犬をなでているときに被験者の血圧が低下することが報告されました。この実験が示すように、人と動物とが接触することで様々な心身の変化が起こりますが、一般的にアニマルセラピーから受ける恩恵は以下の3つに分類されます。

生理的効果

 生理的効果(せいりてきこうか)とは体内において生理学的な変化(ホルモンや脳内の伝達物質、神経系の変化)が生じることによるプラスの効果です。
 例えば、動物と接する人の脳内では「ドーパミン」という脳内伝達物質の分泌が増えるといわれています。このドーパミンは「楽しい」という感情の源ですので、セラピーを受けている人の中では「動物と接していると楽しい!」という体感として経験されます。
 また動物と接しているときの人間の体内では「副交感神経」(ふくこうかんしんけい)が優位になっていると言われています。「副交感神経」は「交感神経」と対になって「自律神経」(じりつしんけい)とも呼ばれますが、末梢神経の拡張、血圧の低下、心拍数の抑制など、いわゆる「リラックス」した状態を作り出す神経です。動物と接するときに多くの人が感じる「落ち着く」、「癒される」という感覚は、この副交感神経によって生み出されていると考えられます。
 動物の持つ生理的効果の実証実験としては、エリカ・フリードマンとメリッサ・グッドマンらが行った、「人が他人と話しているときと、ペットに触りながら話しかけるときの血圧を比較する」というものが有名です。結果は以下。 あなたがペットと生きる理由(ペットライフ社)
対人・対ペットの最高血圧比較図
人が他人と話しているときと、ペットに触りながら話しかけるときの収縮期、および拡張期血圧の比較図  このように、「人ではなく動物に話しかけること」には血圧を下げ、ストレスを軽減する効果があることが判明しました。また子供に対する朗読実験においても、部屋の中に犬がいるときの方が、朗読中の緊張感が緩和され、血圧が低くなる傾向があるとの結果が出ています。

心理的効果

 心理的効果(しんりてきこうか)とは動物との接触によって人の内面や行動がプラスの恩恵を受けることです。
 例えば、一度動物と接して楽しい経験をすると「イヌのおなかは柔らかかったなぁ・・」、「またワンちゃんに会いたいなぁ・・」というように、頭の中で動物とのセッション風景を思い返すだけで、そのときに経験した「楽しい!」という感情が再現されるようになります。動物と触れ合った記憶の想起により日常生活の中で「楽しい!」という感情が増えると、単純に抑うつ症状の改善になりますし、ホリスティック(全体的・全身的)な観点で見ると、免疫力の向上にもつながるでしょう。
 また「動物ともう一度触れ合いたいから学校に行こう!」、「イヌと散歩したいからリハビリがんばろう!」といった思考に結びつけば、患者を回復に向かわせる動機付けとして機能しているといえます。

社会的効果

 社会的効果(しゃかいてきこうか)とは、動物と接することにより、人と人との交流が円滑になる効果を指します。
 例えば、老人ホームにおいて人とほとんど口を利くことのなかった非社交的な老人が、アニマルセラピーの一環として触れ合った犬の話題を通じて、他の入所者と会話するようになるとか、あるいは人間関係が希薄になりがちな震災後の仮設住宅において、犬や猫などのペットが住民たちの会話の潤滑剤になってくれる、といった具合です。
 また、動物の持つ印象効果に関しては、複数の研究者によって以下のような結果が報告されています。 あなたがペットと生きる理由(ペットライフ社)
動物の社会的印象効果
  • ピーター・メセント 一人で歩いている人よりも犬を連れている人の方が話しかけられる割合が高い。また、赤ちゃんを連れている人よりもペットを連れている人の方が近づきやすい。
  • ランダル・ロックウッド 人とペットが一緒に写った写真を見せたところ、社交的な魅力が増し、好ましい印象を他人に与えることが分かった。
  • リネット・ハート 障害を持つ子供たちが注目されたり話しかけられたりする機会は、サービスドッグがそばにいるだけで1人で歩いているときの10倍も多い。
  • アラン・ベックとキャッチャー 囚人や神経麻痺のある人が動物と一緒に写った写真を見せると、魅力的な印象を見る側に与える。
 こうした事実はすべて動物と一緒にいることで他人に好印象を与え、その結果交流する可能性が増えるかもしれないということを意味しています。アメリカ大統領がホワイトハウスに犬や猫を迎え入れることが慣例化していますが、上記した効果と無関係ではないのかもしれません。

アニマルセラピーの効果・具体例

 上記したように、アニマルセラピーの効果は大別して3つに分類されますが、アニマルセラピーによって得られる身体的、心理的変化の具体例の一部をご紹介します。
アニマルセラピーの効果・具体例
  • 老人の孤独感の減少(Marian & William/2002)
  • 子供のストレス軽減効果(Nagengast/1997)
  • 広汎性発達障害児童の集中力向上(Francois/2002)
  • 小児がん患者の入院環境ストレス軽減(France/2002)
  • 小児てんかん予知(Adam/2004)
  • 抑うつ症状の減少(Sandra & Kathryn/1998)
  • 統合失調症の意識変化(Inber/2005)
  • うつ病や人格障害患者の症状軽減(Yamazaki & Machizawa/1994)
  • 境界性人格障害の症状軽減(Sato/2003)
  • 脳血管性痴呆患者の運動機能回復(Motooka/2002)
  • 副交感神経の亢進作用(Motooka/2002)
犬を飼うと健康になる? アニマル・セラピー(駿河台出版社)

動物の代わりとしてのエンタテインメントロボット

 生きている動物の場合、アレルギーや事故、人獣共通感染症(動物から人へ感染する病気)などへの不安から、導入するのが難しいという状況が時として発生します。しかし動物と接することが難しい患者や環境でも、比較的安心して導入できるのがロボットセラピーです。これは動物を模した人工的なロボットを生身の動物の代わりとして用いる手法ですが、患者に対して短期間に刺激を与え、気力を鼓舞する補助として利用できる可能性が十分にあります。有名なところではソニーの犬型ロボット・AIBO(生産中止)やオムロンの猫型ロボット・ネコロ(生産中止)がありますが、その効果の高さからギネスにまで認定されたのが、アザラシ型ロボットパロです。
 パロは、本物の動物を飼うことが困難な場所や人々のために、セラピーを目的に1993年から研究開発されたロボットで、デイサービスセンター、介護老人保健施設、特別養護老人ホーム、小児病棟、児童養護施設などで、数多く、長期間に渡る実験を続けることにより、アニマル・セラピーと同じ効果を得られることが確認されています。 独立行政法人・産業技術総合研究所のレポート  また国内の様々な施設だけでなく、スウェーデン・カロリンスカ病院および国立障害研究所、イタリア・シエナ大学付属病院、フランス・カーパプ病院、アメリカ・スタンフォード大学付属病院でもパロによるロボット・セラピーの研究が実施され、非常に良好な結果を得ています。これらの実証実験の成果が認められ、2002年2月には、「世界で最もセラピー効果があるロボット」としてギネス世界記録に認定されました。
メンタルコミットロボット「パロ」
 以下でご紹介するのは、株式会社知能システムが開発し、世界で最もセラピー効果があるロボットとしてギネス世界記録に認定されたアザラシ型ロボット「パロ」の動画です。 元動画は⇒こちら
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セラピードッグの仕事

 アニマルセラピーに用いられる動物は、一般的には情緒レベルが高い哺乳類が採用されます。ここで言う「情緒レベルが高い」とは、人間の喜怒哀楽に何らかの形で共鳴してくれるという意味です。アニマルセラピーは様々な哺乳類が用いられますが、人との接触でストレスを感じやすかったり(ネコ)、人との接触によるリアクションが他の動物に比べて薄かったり(ウサギ)、人と接するには時間と空間の制約が大き過ぎたり(ウマやイルカ)、いろいろな障壁もあります。
 そうした中でイヌはセラピーアニマルとして広く用いられ、セラピードッグヒューマン・ケナイン・ボンド(Human Canine Bond, 人と犬の絆)という特殊な用語もあるくらいです。これはイヌのもつ生来の社交性(長時間人と接していてもストレスを感じにくい)、反応の素直さ(人との接触でリアクションが大きく、喜怒哀楽がわかりやすい)、身近さ(時間・空間的な制約を要さない)などが評価され、きわめて良質のセラピー効果を生むことが確認されているためです。

ヒューマン・ケナイン・ボンド~人と犬の絆

 1983年、ウィーンで開催されたシンポジウムにおいてレオ・K・バスタド医師が初めて用いた「Human Animal Bond」(ヒューマン・アニマル・ボンド=人と動物との絆)という言葉は、その後に設立されたデルタ協会の普及活動により、世界的な認知を得ていきました。そして今日、全米獣医師協会は明確にこの「Human Animal Bond」の意義を認めています。 AVMA policy
全米獣医師協会の声明
 ヒューマン・アニマル・ボンドとは人と動物の双方にとって有益かつ動的な相互関係であり、その関係は人と動物の両者の健康と福祉にとって重要な振る舞いによって影響される。(中略)獣医師の役割は、人と動物の関係が持つ可能性を最大限に引き出すことにある。
全米獣医師会は公式に以下の点を認める。
  • ヒューマン・アニマル・ボンドは確実に存在し、患者やコミュニティの健康にとって重要であること
  • ヒューマン・アニマル・ボンドは、過去数千年にわたり存在してきたこと
  • 人と動物双方の要求に応える獣医学の分野において、ヒューマン・アニマル・ボンドはきわめて重要であること
 人と犬との絆をあらわすヒューマン・ケナイン・ボンド(Human Canine Bond)という言葉は、このヒューマン・アニマル・ボンドから派生したものです。

セラピードッグの育成

 日本においてセラピードッグを育成している団体はいくつかありますが、もっとも有名なのが「国際セラピードッグ協会」です。当協会では、代表を務める大木トオル氏が30年に及ぶ米国での経験をもとに、日本におけるセラピードッグの社会啓蒙活動を行うと共に、セラピードッグの育成とトレーナーの育成支援を行っています。セラピードッグとして育成されるのは、日本各地の動物愛護センターなどに収容されて、殺処分される運命にあった犬たちです。中でも名犬チロリは有名で、書籍やテレビなどでも紹介されています。
 国際セラピードッグ協会では、大木氏自らが考案した45以上のカリキュラムを2年以上かけて犬たちに教え込みます。同氏の著書「セラピードッグの世界」(日本経済新聞出版社)からその一部を抜粋すると以下のような感じです。
国際セラピードッグ協会・訓練カリキュラム
  • カリキュラムA犬に指示を出す際のボイスコール、ハンドコール等のコーリングマナー、シット(おすわり)やレイダウン(伏せ)等、あらゆる場所で必要とされる基本動作であるスタンダードマナー、並足や駆足など歩くときのスピードを調整するウォーキングマナー、複数の犬を同時に移動させる際のラインマナー
  • カリキュラムBハンドラーと犬が現場になれるためのフリーラウンド、障害を抱えた人と歩行する際のウォーキングマナー・ステップ2
  • カリキュラムC歩行者が急停止、急反転しても、犬がピッタリ寄り添って歩行できるようにするウォーキングマナー・ステップ3、杖の落下や突然の物音に遭遇しても冷静さを失わないケインドロップ
  • カリキュラムD犬を操るハンドラーのリーシコントロールトレーニング
  • カリキュラムE車椅子利用者と犬の同速歩行訓練であるホイールチェアマナー、人間のひざの上に犬を上手に乗せるホールディングマナー
  • カリキュラムF公共スペースで正しく人々の邪魔にならないよう行動させるインドアエリアマナー
  • カリキュラムG病院や福祉施設などの個室において、ベッドに寝ている人を対象とした訓練であるベットマナー

アニマルセラピーの注意点

 通常、セラピードッグの活動は、犬の疲労を考慮して30~50分くらいが一般的になっています。これは人間の都合に合わせてセラピードッグを酷使してしまうと、たとえ人間が元気になったとしても、逆に犬が体調を崩すかもしれないからです。セラピーロボットと違い犬は生身の動物ですので、セラピードッグを用いたアニマルセラピーを行う際は、犬の側の健康と福祉にも配慮しつつ、主に以下のような点に注意を払う必要があります。
アニマルセラピーを行う際の注意点
  • 動物にストレスとなるほど長時間従事させない
  • 抑うつ状態が強いと患者にとっては、動物やボランティア、ソーシャルワーカーとの接触が逆に負担となったり、攻撃の対象となったりする
  • 多くの人が共同で利用する施設などでは、動物嫌いの人もいるので、事前に調査する
  • 人間の側にアレルギーや特定動物に対する恐怖症がないことを確認する
  • 免疫機能が低下している患者にとっては命にかかわる人獣共通感染症の予防を徹底する
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