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犬の不正咬合

 犬の不正咬合(ふせいこうごう)について病態、症状、原因、治療法別にまとめました。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。

犬の不正咬合の病態と症状

 犬の不正咬合とは、上下の歯が正常な位置につかず、噛み合わせが悪くなってしまった状態のことです。
 犬の歯は、乳歯で28本、永久歯で42本あります。乳歯から永久歯への生え変わりが始まるのは、最も早い切歯(前歯)で生後3~4ヶ月齢、最も遅い後臼歯(奥歯)で生後5~7ヶ月齢頃です。正常であれば、上下の歯がうまく噛み合わさってお互いを邪魔することはありません。 犬の正常な歯並び  しかし一部の歯がおかしな方向に生えてしまったり、上下の顎の長さがアンバランスだと、歯並びに異常が生まれてしっかりとしたかみ合わせができなくなってしまいます。この状態が「不正咬合」です。犬の不正咬合には以下のような種類があります。
犬の不正咬合のタイプ
  • クラス1~クロスバイト不正咬合クラス1~クロスバイト 「クラス1」は、上下の顎の骨は正常だけれども、一部の歯並びがおかしくなった状態のことです。具体的には、下の切歯が前に突き出す「前方クロスバイト」、下の臼歯が舌の側に倒れこむ「後方クロスバイト」、下の犬歯が上の犬歯の後ろ側に倒れこむ「犬歯クロスバイト」などがあります。最後に挙げた「犬歯クロスバイト」において、本来なら下顎犬歯の後ろにあるべき上顎犬歯が、なぜか前方に突き出てしまった状態は特に「槍状歯」(Lance teeth)と呼ばれ、シェットランドシープドッグで好発します。
  • クラス2~オーバーバイト不正咬合クラス2~オーバーバイト 「クラス2」は、下顎に対して上顎が長すぎる状態のことです。簡単に言うと人間の「出っ歯」に近い状態で、「オーバーバイト」(or オーバーショット)とも呼ばれます。下の歯が上顎の口蓋を傷つけて穴をあけてしまうこともしばしばです。
  • クラス3~アンダーバイト不正咬合クラス3~アンダーバイト 「クラス3」は、上顎に対して下顎が長すぎる状態のことです。簡単に言うと人間の「しゃくれ」に近い状態で、「アンダーバイト」(or アンダーショット)とも呼ばれます。
  • クラス4~ライバイト不正咬合クラス4~ライバイト 「クラス4」は、左右の歯がアンバランスに成長した状態のことです。右と左における咬合面の高さが違うため、顎が曲がって見えます。別名は「ライバイト」(wry bite=ゆがんだかみ合わせ)です。
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犬の不正咬合の原因

 犬の不正咬合の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の不正咬合の主な原因
  • 遺伝 不正咬合の一部は遺伝によって生み出されています。現在、「国際畜犬連盟」(FCI)によって公認されている300を超える犬種の中には、「こういう姿であるべき」という犬種標準の中に、なぜか不正咬合が含まれているものがあります。具体的には、ブルドッグボクサーなどです。こうした不正咬合は、人間の選択繁殖によって生み出されたものですので、原因は「遺伝」ではなく「人間」であると言い換えることもできるでしょう。
  • 乳歯遺残 小型犬種の中には「乳歯遺残」(にゅうしいざん)と呼ばれる歯列異常を呈するものが散見されます。これは、通常であれば永久歯とスムーズに置き換わるはずの乳歯が、なぜかいつまでも口の中にとどまり、永久歯の成長を邪魔してしまう状態のことです。一般的に、上顎犬歯の乳歯が永久歯と共存している期間は長くて2週間、下顎犬歯は1週間程度ですので、これよりも長く乳歯が居残っている場合は「遺残」とみなされます。放置すると、犬歯のクロスバイト引き起こすことから問題とされています。乳歯から永久歯に生え変わる際の詳細なメカニズムは未だによくわかっていませんので、必然的に乳歯遺残の原因も不明です。しかし小型犬種に多いことから、顎の骨と歯の大きさのアンバランスが一因としてあるものと考えられています。 犬の乳歯遺残~萌出しはじめの永久歯と、残存している乳歯が共存している
  • 怪我や外傷 子犬の頃に顎関節の骨折脱臼といった怪我を負ってしまうと、血液の供給がアンバランスになり、左右における歯の成長がバラバラになってしまうことがあります。その結果クラス4のライバイトを引き起こします。
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犬の不正咬合の治療

 犬の不正咬合の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の不正咬合の主な治療法
  • 抜歯 乳歯がおおむね生えそろった生後8週齢を目安に、上下の顎の長さを評価して、正しいバランスが保たれているかどうかを確認します。下顎が上顎に対して短すぎる「オーバーバイト」の傾向が見られた場合は、下顎の歯が口蓋に突き刺さって痛みを引き起こすため、抜歯が適用されます。また犬歯が舌側に傾いているような場合も、早めに抜いておかないと永久歯が同じ方向に生えてしまう危険性があるため、抜いてしまいます。
     乳歯から永久歯への生え変わりが始まる生後4~6ヶ月齢を目安に、乳歯遺残の有無を確認します。もし抜け落ちずに残っている乳歯があった場合は、永久歯の萌出を邪魔してしまいますので、なるべく早めに抜いてしまいます。
  • 歯列矯正 永久歯が生えそろってしまった後で不正咬合が発見された場合は、歯列矯正が行われることがあります。適用は、オーバーバイトの傾向があったり、下顎犬歯が舌側に倒れこんで口蓋を傷つけているなど、歯並びの悪さが犬に著しい苦痛を与えているような場合です。方法としては、インクラインプレイン、咬翼装置、インクラインキャップなどいろいろありますが、犬の噛む力を応用して歯を適切な方向に押し戻すタイプのものが大半です。専門性の高い分野ですので、全ての動物病院が対応しているわけではありません。また、審美的な理由による治療は、倫理上の問題から断られることがあります。これは、治療を施した犬がその後ショードッグや繁殖犬として用いられ、不正咬合の遺伝素因を拡散してしまう危険性があるためです。
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