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犬の胃運動低下症~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の胃運動低下症(いうんどうていかしょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の胃運動低下症の病態と症状

 犬の胃運動低下症とは、胃の動きが低下することで、内容物が胃の中に長時間とどまってしまう状態のことです。
 食べ物や飲み物が胃の中に入ってくると、胃の上部にある筋肉は緩やかに伸縮しながら内容物を下の方へ送り出します。一方、胃の下部にある筋肉は、強く伸縮することによって胃の出口である幽門(ゆうもん)を押し広げ、内容物を十二指腸へと送り出します。 胃袋の正常な運動  胃の上下におけるこうした運動は、胃袋に埋め込まれているペースメーカー細胞と自律神経によって絶妙にコントロールされており、通常は食べたものが8時間以上胃の中にとどまることはありません。しかし、指令を出す神経や、その指令を受け取る筋肉のどちらかに障害があると、胃の正常な動きが阻害され、内容物の停滞が起こってしまいます。この現象が「胃運動低下症」 です。
 犬の胃運動低下症の症状としては以下のようなものが挙げられます。
犬の胃運動低下症の主症状
  • 食後に毎回吐く
  • よくげっぷをする
  • 食欲不振
  • 体重減少
  • 胆汁の逆流と嘔吐
胆汁嘔吐症候群
 胆嚢から十二指腸へ分泌された胆汁は、通常胃袋へ流れ込む事はありません。しかし、胃運動低下症にかかっている場合は、胆汁が胃の幽門部を通過して逆流し、粘膜を傷つけてしまうことがあります。これが胆汁嘔吐症候群です。好発年齢は中~老齢で、夜遅くか朝早くに胆汁色(黄~緑)の液体を吐き出します。

犬の胃運動低下症の原因

 犬の胃運動低下症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の胃運動低下症の主な原因

犬の胃運動低下症の治療

 犬の胃運動低下症の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の胃運動低下症の主な治療法
  • 応急処置 激しい嘔吐で脱水症状を示しているような場合は、取り急ぎ輸液などを行って状態を安定させます。
  • 基礎疾患の治療  別の疾病によって胃運動低下症が引き起こされている場合は、まずそれらの基礎疾患への治療が施されます。
  • 投薬治療 胃袋の運動を促進するような薬が投与されます。具体的には、メトクロプラミド(幽門部の収縮を促進)、シサプリド(食道下部の収縮を促進)、エリスロマイシン(胃全体に作用)などです。ただし、胃袋の出口が閉塞している場合は他の療法が選択されます。
  • 食餌療法 胃への負担を減らすため、液状~半液状で脂肪や繊維が少ない食餌に切り替えます。また、一度に大量ではなく、少量を頻回に分けて与えるようにします。
  • ストレス管理 何らかのストレスが原因で発症している場合は、犬の置かれている環境を見直し、可能な限りストレスフリーにしてあげることが治療につながるでしょう。 犬の幸せとストレス