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犬の前庭神経炎

 犬の前庭神経炎(ぜんていしんけいえん)について病態、症状、原因、治療法別にまとめました。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。

犬の前庭神経炎の病態と症状

 犬の前庭神経炎とは、脳神経の一種である前庭神経(ぜんていしんけい)に炎症が発生し、主に平衡バランス感覚が障害を受けた状態を言います。 犬の蝸牛と三半規管の位置関係  犬の耳の奥には「内耳」と呼ばれる部分があり、そこにカタツムリのような形をした「蝸牛」(かぎゅう)と呼ばれる器官と、プレッツェルのような形をした、「三半規管」(さんはんきかん)と呼ばれる器官が、骨の中にすっぽりと収まっています。「蝸牛」には「蝸牛神経」がつながっており、音を脳に伝える役割を果たしています。一方、「三半規管」には「前庭神経」(ぜんていしんけい)がつながっており、体の位置情報を脳に伝える役割を果たしています。この2つを合わせたものが「内耳神経」(ないじしんけい, 第8脳神経)です。「前庭神経炎」といった場合は、内耳神経のうち、主に「前庭神経」の方に炎症が発生し、頭や体の位置を適正にコントロールできなくなった状態のことを意味します。
 犬の前庭神経炎の主な症状は以下です。人間で言うと、イスに座ってぐるぐる回った直後に近い状態と言えるでしょう。
犬の前庭神経炎の主症状
  • 意味もなく頭をかしげる
  • ぐるぐる回る
  • ふらふら歩く
  • 横に倒れる
  • 眼振(眼球があちこち動く)
 以下でご紹介するのは、前庭神経炎を患った犬の動画です。意味もなく首をかしげ、まっすぐ歩けない様子が観察できます。 元動画は⇒こちら
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犬の前庭神経炎の原因

 犬の前庭神経炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の前庭神経炎の主な原因
  • 炎症  耳の奥にある内耳で発生した炎症が、前庭神経に波及することで発症します。 外耳炎中耳炎内耳炎のほか、耳腫瘍などが原因として挙げられます。
  • 未知の要因  炎症の原因がよく分からないこともしばしばです。ストレス、環境、外気圧など、様々な要因が複合した可能性が考えられます。8歳を超えた老犬に多いことから、老化現象が何らかの関わりを持っていることも考えられます。
 2016年に行われた調査により、人間でよくある脳の虚血性発作が犬で起こった場合、平衡感覚を司る小脳に障害が出るケースが多いことが明らかになりました。主な症状は運動失調、頭の傾斜、眼振(目が揺れる)などで、前庭神経炎と非常に似通っています。明白な理由がないにもかかわらず上記したような症状が現れたときは、前庭ではなく、小脳内で発生した虚血性発作や微小梗塞が原因になっている可能性を考慮する必要があるでしょう。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
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犬の前庭神経炎の治療

 犬の前庭神経炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の前庭神経炎の主な治療法
  • 対症療法  症状の軽減を目的とした治療が施されます。具体的には副腎皮質ホルモン薬やビタミン、抗めまい薬などが投与され、およそ1週間程度で回復に向かいます。またふらふらと歩いて危険なため、症状が出ている間は散歩を控えたり、危険な場所を避けながら散歩するよう配慮します。
  • 基礎疾患の治療 外耳炎中耳炎内耳炎など、他の疾患が明らかな場合は、まずそうした疾患の治療が管理されます。
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