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犬の馬尾症候群

 犬の馬尾症候群(ばびしょうこうぐん)について病態、症状、原因、治療法別にまとめました。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の馬尾症候群の病態と症状

 犬の馬尾症候群とは、脊髄の下端からしっぽに向かって伸びている「馬尾」(ばび)と呼ばれる神経の束に異常が生じた状態のことです。 犬の脊髄・馬尾・尾骨神経の位置関係模式図  犬の背骨の中を走っている脊髄は、腰の骨を構成している腰椎の内、上から5番目に当たる第五腰椎くらいで終わっています。そこから下に向かってしっぽの先まで伸びている神経の束が「馬尾」(ばび)です。ちょうど、馬のしっぽのように見えることから名づけられました。この馬尾は、膀胱、肛門、後足の神経などと所々で連結しているため、一部で生じた異常が、他の様々な神経にまで波及してしまうことがよくあります。このようにして発症するのが「馬尾症候群」です。
 馬尾症候群で見られる主な症状は以下です。馬尾は「尾骨神経」、「骨盤神経」、「下腹神経」、「陰部神経」、「坐骨神経」といった末梢神経と複雑に連結していますので、主にこれらの神経に関連した障害が現れます。
馬尾症候群・主症状
  • しっぽの付け根を触ると痛がる(尾骨神経)
  • しっぽが動かない+感覚がない(尾骨神経)
  • 自力でおしっこができず、膀胱に尿がたまる(陰部神経)
  • 排便のコントロールができず、垂れ流す(陰部神経)
  • 後足の動きがおかしい(坐骨神経)
  • 運動を嫌がる
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犬の馬尾症候群の原因

 犬の馬尾症候群の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の馬尾症候群の主な原因
  • 先天性の奇形 先天的な椎骨の奇形により、脊髄や神経の機能を損なってしまうことがあります。好発品種はボーダーコリージャーマンシェパードロットワイラーボクサーなどで、好発年齢は3~8歳です。
  • 後天性の外傷 しっぽの骨折脱臼と言った怪我のほか、しっぽを引っ張ることで生じる「仙尾部外傷」(しっぽ引っ張り外傷)や下部腰椎(L7~S1間)の椎間板ヘルニアといった後天的な外傷がきっかけとなって発症することもあります。
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犬の馬尾症候群の治療

 犬の馬尾症候群の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の馬尾症候群の主な治療法
  • 先天性馬尾症候群の治療 馬尾症候群が先天的な奇形の結果として生じている場合は、自然治癒することがないため外科手術の適用となります。具体的には、第七腰椎と第一仙椎の後面に位置する椎弓(ついきゅう)と呼ばれる部位を切って、脊髄や神経に対する圧迫を取り除く方法や、椎間関節(ついかんかんせつ)と呼ばれる背骨間の関節を切って神経の根元をリリースするといった方法があります。
  • 後天性馬尾症候群の治療 馬尾症候群が後天的な外傷によって生じた場合は、神経の機能が自然に回復するまで、しっぽや腰への負担を減らして安静を心がけます。猫におけるデータによると、外傷から48時間経った時点で、しっぽの付け根5cm近辺の痛覚が残っている場合は、膀胱の機能も回復しやすいと言われています。またたとえ痛覚が消失していても、約60%の症例では膀胱の機能を取り戻したとも。しかし機能が回復するまでは、尿道カテーテルや膀胱カテーテルで膀胱内に溜まった尿を定期的に空にしたり、浣腸や軟便剤で直腸を空にするといった、排泄の補助が必要です。
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