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犬のマイナーな寄生虫

 犬の寄生虫症のうち、頻度が低いとか症状が軽いといった理由で、あまり知られていないマイナーな寄生虫についてまとめました。

胃虫

 「胃虫」とはフィサロプテラ(Physaloptera)属の旋尾線虫のことで、症状を引き起こした場合は「フィサロプテラ症」とも呼ばれます。成虫は3~5cmで、脊椎動物の胃粘膜に口吻で付着し、わずか1匹の寄生でも胃炎を引き起こすことがあります。胃に寄生した成虫は虫卵を糞便中に排出するようになり、糞便中で孵化した幼虫はカブトムシ、コオロギ、ゴキブリといった糞食昆虫からトカゲ、ハリネズミといった昆虫食動物の体内へと移動します。そしてこれらの昆虫食動物を捕食することで、犬や猫にも感染します。
  • 症状多くの場合無症状 / 1ヶ月以上続く嘔吐 / 黒色タール便 / 成虫を吐き出す
  • 治療ピランテルとイベルメクチンの投与により5~8日で症状が消え、排卵も停止する
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気管寄生線虫

 「気管寄生線虫」とは、豚肺虫属の「Oslerus osleri」と呼ばれる蠕虫の一種です。成虫は犬の気管分枝部に寄生して結節を作り、気管内に幼虫を含有する虫卵を放出します。放出された幼虫は糞便や嘔吐物を介して他の犬に直接感染する性質を持っているため、オオカミ、コヨーテ、キツネ、ディンゴなど、母犬が吐き戻したものを食べる習性がある野生動物において高い感染率を示します。多くは4~6ヶ月齢の子犬に発症しますが、感染自体は数か月前に遡ると考えられます。
  • 症状咳 / 呼吸が荒い / 吸気に努力を要する / 呼気に時間がかかる
  • 治療オキシベダゾール(日本においては動物医薬品として未認可) / 抗蠕虫薬(ほぼ無効) / 気管結節の外科的な切除 / プレドニゾン投与による気管粘膜の炎症軽減
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肺虫

 「肺虫」とは、豚肺虫属の「Filaroides hirthi」という線虫の一種です。日本、北米、ベルギーでは「Filaroides milksi」という種の報告もありますが、極めてまれとされています。成虫は肺の実質に渦巻き状に寄生し、殻の薄い虫卵や幼虫を気道中に放出します。飲み込まれて糞便の中に紛れ込んだ幼虫は、主に経口感染によって他の動物の体内に侵入します。多頭飼育環境における食糞や、母犬の糞便を子犬が食べてしまうことで感染が広がるケースが多いようです。
  • 症状ほとんどは無症状 / 運動時に軽く咳をする / 肺炎(クッシング症候群や免疫力が低下した個体において)
  • 治療フェンベンダゾールプレドニゾンなどによる駆虫
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毛細線虫

 「毛細線虫」とは鞭虫類に属する寄生虫の一種で、「呼吸器毛細線虫」、「鼻腔毛細線虫」、「泌尿器毛細線虫」などが知られています。
  • 呼吸器毛細線虫成虫は気道の粘膜に埋もれており、気道内に虫卵を放出。虫卵は咳によって気管から排出され、嚥下されて糞便中に出る。ほとんど無症状だが、慢性の咳や喘鳴(ぜーぜー)といった症状を示すこともある。フェンベンダゾールやイベルメクチンといった駆虫薬が有効。
  • 鼻腔毛細線虫寄生虫の生活環は不明。ミミズを中間宿主としている可能性がある。症例は少ないが、ほとんどが子犬。多くの場合無症状だが、慢性のくしゃみや青っぱな、時に鼻血と言った症状を示すこともある。フェンベンダゾールやイベルメクチンといった駆虫薬が用いられる。
  • 泌尿器毛細線虫「Pearsonema plica」(犬と猫)や「P.feliscati」(猫だけ)が、膀胱、腎盂、尿管などに寄生することで発症する。幼虫を含んだミミズを食べることで感染するが、不明な部分も多い。犬ではアメリカ南東部における感染率が高く、猫ではオーストラリアにおける感染率が高い(35%)。多くの場合無症状だが、頻尿、血尿、排尿障害などの症状を示すこともある。
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旋毛虫

 「旋毛虫」とは線虫に属する「Trichinella spiralis」という寄生虫の一種です。成虫が脊椎動物の消化管に生息するのに対し、幼虫は全身の骨格筋に生息するという特徴を持っています。幼虫はキツネ、オポッサム、アライグマ、ブタ、クマ、アザラシ、ウマといった動物の骨格筋に潜んでおり、これらの死肉を犬や猫が口にすることで感染します。また犬を食べる文化がある国においては、人への感染例も多く報告されています。幼虫は小腸内で成虫に脱皮成長し、「前幼虫」と呼ばれるたくさんの子孫を腸粘膜内に放出します。これらの前幼虫はその後、リンパ管や血流を介して骨格筋に達し、らせん状に巻いて幼虫→成虫へと成長していきます。
  • 症状嘔吐 / 下痢 / 筋肉痛 / 筋肉の硬直
  • 治療特別な治療が無くても自然治癒する
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肺吸虫

 「肺吸虫」とは「Paragonimus kellicotti」と呼ばれる雌雄同体の寄生虫の一種です。成虫は細気管支に直接通じる胸膜の下で嚢胞を形成し、そこで虫卵を放出します。虫卵はいったん気道に出た後飲み込まれ、最終的には糞便中に紛れ込みます。外に出た虫卵は第一宿主である巻貝の体内に入ったのち、第二宿主であるザリガニに取り込まれます。そしてこのザリガニを食べた犬、猫、ミンクなどの体内で成虫となり、時に臨床症状を引き起こします。
  • 症状ほとんどは無症状 / 咳 / 喀血
  • 治療ほとんどは自然治癒 / 緊張性気胸の場合は外部排出
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糞線虫

 「糞線虫」とは「Strongyloides stercoralis」と呼ばれる線虫の一種です。犬や猫のほか、人間にも寄生することが分かっています。成虫は犬と猫の体内において虫卵を生み、孵化した幼虫は肺、小腸などに移行します。これらの幼虫は母犬や母猫の初乳の中に紛れ込み、生まれたばかりの子犬や子猫の体内に侵入します。また皮膚を通じて感染することもあるようです。なお人間に感染した場合は、皮膚炎や腹部不快感、下痢と言った症状を引き起こします。
  • 症状水様便 / 衰弱 / 皮膚炎 / 咳
  • 治療感染動物の隔離 / イベルメクチンやフェンベンダゾールが有効
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鞭虫

 「鞭虫」とは「Trichuris vulpi」と呼ばれる線虫の一種です。いくつかの亜種がありますが、そのほとんどは北米、カリブ海諸島、オーストラリアに集中しています。成虫は盲腸内に寄生し、そこで虫卵を放出します。糞便中に紛れ込んだ虫卵はその後、主に経口摂取を通じて犬の体内に入り込みます。なおこの寄生虫は犬にも猫にも感染しますが、猫の場合はなぜか無症状です。
  • 症状ほとんど無症状 / 大腸性の下痢 / 嘔吐 / 代謝性アシドーシス
  • 治療脱水に対する輸液 / フェンベンダゾール、ミルベマイシンなどが有効
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