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犬の伝染病予防ガイドライン

 アメリカ獣医師協会(AVMA)は2016年、現時点で最も効果的と思われる伝染症予防のための最新ガイドラインを公開しました。感染症や寄生虫症といった伝染病から犬たちを効果的に守るための対策について解説します。

基本的な用語解説

 アメリカ獣医師協会(AVMA)は2016年、今までに公開されたガイドラインと、感染症のアウトブレークに関する事例を集め、現時点で最も効果的と思われる伝染症予防のための最新ガイドラインを公開しました(→出典)。
 調査委員会が基礎データとしたのは、過去に公開された感染症予防に関する8つのガイドラインと、寄生虫予防に関する調査を行う独立機関「CAPC」が公開しているデータ、および医療情報に関する巨大データベース「PubMed」、「Web of Science」、「CAB」中からピックアップされた感染症や寄生虫症に関する428個の調査報告書。委員会はこれらのデータを総括し、複数の犬が一箇所に集まるような状況における注意事項を64項目にまとめ上げました。以下は基本的な用語解説です。
用語解説
  • 伝染病病原体と接触することによって犬から犬、犬から人へと移る病気のこと。具体的には、主に細菌やウイルスを原因とする感染症や、ノミやダニによる外部寄生虫症、回虫や条虫による内部寄生虫症など。
  • 空間共有イベント狭い空間内に複数の犬が存在している一時的な状況のこと。具体的にはドッグショー(品評会や服従競技会)、スポーツイベント(アジリティ・フィールドトライアル・ハーディング・ルアコーシング・ハンティング・アースドッグコンテスト)、ドッグラン、プライベートケネル、ペットホテルなど。
  • エビデンスレベル推奨項目の元となっている医学的な根拠がどの程度堅牢かという指標。「IA=根拠が非常にしっかりしており強く推奨される」、「IB=根拠はある程度しっかりしており強く推奨される」、「IC=州や地方の規制によって義務づけられている」、「II=根拠は弱いができれば取り入れたい」

伝染病予防に重要な項目

 以下は、複数の犬たちが一箇所に集合するような状況において、飼い主や施設管理者、イベントの関係者が気をつけるべき伝染病予防のための注意事項です。

一般的な推奨項目

  • 空間共有イベントには感染症の疑いがないと獣医師によって確認された犬だけを参加させる
  • 感染症の疑いがある犬はできるだけ速やかに専属の獣医師やスタッフに報告する
  • 施設や状況をよく知っている獣医師を常駐させ、その場に最適な対策を行う
  • 感染症のリスクや予防法に関するトレーニングを関係スタッフに義務づけ、知識レベルを定期的にテストする
  • その状況におけるリスクに合わせて予防策を講じる。例えば室内、屋外、犬同士の接触、犬と人間の接触、イベントの開催期間、回転率、犬の年齢など
  • 予防策を講じる際は個々の犬、集団全体、そしてその土地の環境を考慮に入れる
  • 犬が国や州境を越えて移動するときは健康証明書の提出を義務付ける
  • 感染症予防のために必要な対策は、参加する人間に対して事前に口頭でしっかりと伝え、自己判断で省略する人が出ないようにする

ワクチン接種

  • 流行しやすい病原体に対応したコアワクチンを接種する。具体的にはジステンパーウイルス(CDV)、イヌアデノウイルス2型(CAV-2)、イヌパルボウイルス2型(CPV-2)、気管支敗血症菌、イヌパラインフルエンザウイルス(CPiV)、狂犬病ウイルス
  • 犬のワクチン接種履歴が分からない時は、最低でも1回のワクチン接種を行って免疫を確立させる。CDV、CAV-2、CPV-2に対しては1週間前まで。気管支敗血症菌、CPiVに対しては3日前まで。狂犬病ウイルスに対しては28日前まで
  • ワクチン接種による免疫力の獲得は100%ではないため、次善策も講じておく
  • ワクチンの接種状態は信頼のおける情報筋を通して確認する
  • 社会化を促すための犬の幼稚園など、犬同士の接触が避けられない場合は、施設の消毒や感染動物の隔離を行った上で実行する
  • 狂犬病予防注射が法律や条例によって決められている場合は、それを遵守する
  • 空間共有イベントが開催される土地で地域的な病原体が流行している場合は、ノンコアワクチンの接種も考慮する。具体的にはレプトスピラ、ボレリア・ブルグドルフェリ(ライム病)、イヌインフルエンザなど

虫や野生動物の制御

  • 空間共有イベントの管理責任者は、昆虫、げっ歯類やその他の野生動物の侵入を制限する
  • 可能な場合は、犬がいる場所から野生動物を完全にシャットアウトする
  • 昆虫や野性動物を誘い込まないよう糞便やゴミといった有機的排出物はできるだけ速やかに処理する
  • 昆虫や野性動物を排除する際は犬にとって安全な方法で行う

媒介生物の制御

  • 外部寄生虫を駆除するための製品を使用する
  • 総合的な害虫コントロールを行う。具体的にはノミ、ダニ、ハエ、蚊、シラミ、サシガメなど
  • もしノミやダニが見つかった場合は殺虫剤を用いて駆除し、イベントの参加を制限する
  • トリパノソーマの流行が確認されている地域においては殺虫剤を用いて駆除する
  • イベントが屋外で開催される場合は害虫のピーク時期を避ける
  • イベントが屋外で開催される場合は害虫の生息場所をできるだけ避ける
  • ダニが潜みやすい草地は短く刈り、ゴミや枝をきれいに取り払っておく
  • 蚊との接触を避けるため、水場近くでのイベントは避け、水を入れた施設は最低でも週に2回交換しボウフラの繁殖を抑える
  • 犬がノミやダニを保有していないかどうかを事前によく確認する
  • 皮膚に食らいついたダニを駆除する場合は、素人が闇雲に行うのではなく熟練した人員が行う
  • 害虫の感染経路を明らかにし、しかるべき対策を講じる
  • カーペットや椅子張り材といった害虫が隠れやすい物品はできるだけ環境から排除する

腸疾患予防

  • 回虫や条虫と言った内部寄生虫に対する駆虫薬を事前に用いる
  • 犬の糞便を速やかに片付け、食糞を事前に防ぐ
  • サルモネラ菌、カンピロバクター、大腸菌といった病原菌の伝染を防ぐため、生のフードは避ける

消毒と衛生管理

  • 清掃と消毒に関する統一的なルールを設け、しっかり守られるよう管理する
  • イベントが開催される場所は清掃や消毒がしやすいよう、できるだけ多孔質ではなく滑らかな材質を用いる
  • 共有を避けるため、道具を用いるときはその犬専用のものを用いる
  • 共有物を使用した後はすぐにきれいにして消毒する。具体的には爪切り、グルーミング道具、水入れボール、食器、体温計など
  • 犬と接触する機会があるすべての人は、施設に入る時と出る時、および犬に触った後にアルコールベースの消毒剤で手を洗う
  • 手洗い場所とアルコール消毒液はすぐに使いやすいよう分かりやすい場所に設置する
  • リードや首輪、おもちゃ、寝具といったものはできるだけ共有しない
  • イベントに参加する前のタイミングで被毛を洗っておく
  • 頻繁に入浴するができないような場合は、かわりにブラッシングを行う

その他の排他的対策

  • 伝染病の感染率が高い1歳未満の子犬は、なるべく空間共有イベントに参加させない
  • 外国からやってきた犬は、地域特有の病気を持ち込まないよう参加日の2週間前まで遡って症状が出ていないことを確認する

施設のデザインと交通制御

  • 病原体の伝染を予防するため密飼い環境は避ける
  • 免疫力が完全でない子犬やワクチン接種を受けていない犬では、特に密飼いに気をつける
  • 犬同士の接触はできるだけ避ける
  • 感染の疑いがある犬が出た時のため、環境内に隔離エリアを設ける
  • 隔離エリアは他の犬との物理的接触ができない状態にする
  • 犬の飼育密度は環境の清潔保全を邪魔しない程度にとどめる
  • 病原体がグループ全体に蔓延するのを防ぐため、グループをいくつかの小グループに分けておく
  • 環境デザインは、犬同士もしくは犬と人間の接触ができるだけ少なくなるようにする

病気の認識と対応

  • イベント参加後2週間以内に何らかの症状を示した場合は、飼い主に報告するよう促す
  • 空間共有イベントの管理責任者は、参加した犬を追跡調査できるようデータを管理し、必要とあらば飼い主やハンドラーにコンタクトを取る
  • 犬の責任者は、犬の健康状態をモニタリングし、事前に注意事項として示されていた何らかの徴候が見られた場合は速やかに報告する
  • 感染の疑いがある犬は、獣医師の診断が出ていなくても取り急ぎその場から隔離する
  • 感染の疑いがある犬やその犬と接触した犬はグループから隔離し、2週間の検疫期間を設ける
  • 飼い主から報告があったとき、その情報をどのように扱うかに関する専門の要員を設けておく