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狂犬病~症状・原因から治療・予防法まで

 犬の狂犬病(きょうけんびょう)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

狂犬病の病態と症状

 犬の狂犬病とは、狂犬病ウイルス(rabies virus)に感染することで発症する病気です。
狂犬病ウイルス  人獣共通感染症(じんじゅうきょうつうかんせんしょう)であり、ヒトを含めたすべての哺乳類が感染します。世界中におけるこの病気の感染者数は約5万人に及び、そのほとんどが死亡するという極めて恐ろしい病気です。特徴的な症状の一つとして「水などを恐れる」という項目があることから、「恐水症」(きょうすいしょう/hydrophobia)と呼ばれることもあります。なお狂犬病を国内から駆逐した「清浄国」としては、日本のほかイギリス、オーストラリア、ニュージーランド、ハワイ、北欧の一部などがあります。一方アメリカにおいては、キツネ、アライグマ、スカンク、コウモリの間で流行する4種の流行株が確認されており、そのすべてが犬猫にも感染することから、いまだに油断できない状態です。
 犬の狂犬病の症状は「狂躁型」(きょうそうがた, 全体の80%)と「沈鬱型」(ちんうつがた, 全体の20%)に分類されます。以下は「狂躁型」の主な症状です。
狂犬病の主症状
  • 前駆期  不安・異常行動・食欲不振
  • 狂騒期  むやみに歩き回る・地面を無意味に掘る・狼のような特徴的な遠吠えをする・非常に攻撃的になる・顔が凶暴になりキツネのようになる・水を極端に怖れる
  • 麻痺期  大量のヨダレを流す・足腰が立たなくなる・衰弱して死に至る

狂犬病の原因

 犬の狂犬病の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
狂犬病の主な原因
  • 感染動物との接触  すでに狂犬病ウイルスに感染した動物にかまれることにより、傷口から唾液とともにウイルスが侵入します。
     かまれた部位や体内に侵入したウイルスの量、ウイルスの病原性の度合いによって左右されますが、おおむねかまれてから2~6週間後に発症します。
偽性狂犬病  「偽性狂犬病」とは、狂犬病ウイルスではなく豚ヘルペスウイルス1型によって引き起こされる症状のことで、「オーエスキー病」とも呼ばれます。症状は狂犬病のそれとよく似ており、発熱、嘔吐、大量のよだれ、呼吸の乱れから、震え、痙攣、四肢硬直、昏睡へと進行し、多くのケースでは死んでしまいます。感染経路は、ウイルスを保有する豚との直接的・間接的接触です。ブタはもちろんのこと、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコにも感染することが確認されていますので、養豚場など、犬猫と豚とが接触する機会が多い場所においては注意が必要です。

狂犬病の治療

 犬の狂犬病の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
狂犬病の主な治療法
  • ワクチン接種  狂犬病は発症すると致死率がほぼ100%という恐ろしい病気ですので、ワクチン接種による予防が実質的な予防・治療法といえます。
     狂犬病を撲滅させるため我が国では「狂犬病予防法」を制定し、飼い犬の登録と年1回の予防接種、放し飼いの禁止、野犬の捕獲、輸出入動物の検疫、 と国をあげての防疫体制をとっており、1957年以降狂犬病の発生はありません。また狂犬病予防法では、犬の飼い主に毎年1回の狂犬病予防注射接種を義務付けています。
     畜犬登録(ちくけんとうろく)済みの人は時期が近づくと葉書などで連絡が来ます。まだ畜犬登録していない人は市区町村に問い合わせて集団接種の日時と会場をお問い合わせ下さい。集団接種の機会を逃しても動物病院などで予防注射はできますが、その場合接種済み証明書を保健所などに提出する必要があります。 犬のワクチン接種
ヒトの感染例  犬が狂犬病に感染したという例は1957年以降報告されていませんが、ヒトの感染例はいくつかあります。
 直近の例では、2006年11月、フィリピンで犬にかまれた京都市の男性が帰国後に発症して死亡しており、さらに同月、フィリピンに滞在していた横浜市の男性が、帰国後に発症して同じく他界しています。