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犬の日和見感染症

 「日和見感染症」(ひよりみかんせんしょう)とは、動物の免疫力が低下したタイミングを見計らって、それまで体内に潜んでいた微生物が突然病原性を発揮し、様々な症状を引き起こす現象のことです。感染症を引き起こす病原体としては、小さなものから順に「ウイルス<細菌<真菌<藻類」などがあります。

ウイルス

 「ウイルス」とはタンパク質の殻とその内部に入っている核酸からなる生物です。細胞は持たないものの遺伝子は保有しており、自己を複製する際は他の生物の細胞を利用します。大きさは数十nm~数百nm程度です(※1nm=1mmの百万分の一)。

乳頭腫症

 「乳頭腫症」(にゅうとうしゅしょう)とは、「パピローマウイルス」(Papilloma virus)によって引き起こされる日和見感染症です。皮膚の上にイボ(疣贅, ゆうぜい)を作るのが特徴で、複数箇所に境界が明瞭なピンク~ホワイトの増殖性腫瘍を形成します。直径が1cmを超えることはなく、また扁平上皮ガンに進行することも稀です。犬に感染するものとしては5種類が確認されており、口腔内、目、皮膚など、好発部位にそれぞれ特徴があります。
  • 症状イボの形成 / 嚥下困難 / よだれ / 食欲不振 / 口臭の悪化
  • 治療自然退縮を待つ / あまりにも数が多い場合は外科的な切除

ロタウイルス感染症

 「ロタウイルス感染症」とは、二本鎖RNAウイルスの一種である「ロタウイルス」(Rotavius)によって引き起こされる日和見感染症です。宿主を選り好みせず、また胃酸の防壁を突破できるため、調査したほとんど全ての動物からウイルスが発見されています。人間も例外ではなく、特に開発途上国では、2歳未満の幼児における重篤な胃腸炎の原因となっています。感染するのは小腸絨毛の先端部分にある上皮細胞です。
  • 症状下痢 / 脱水
  • 治療輸液による脱水の改善
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細菌

 「細菌」とは核を持たない単細胞生物の総称です。「バクテリア」、「真正細菌」とも呼ばれます。大きさは0.5~5μm程度です(※1μm=1mmの千分の一)。

アクチノミセス症

 「アクチノミセス症」とは、犬と猫の口内常在細菌である「アクチノミセス」(Actinomyces)によって引き起こされる日和見感染症です。粘膜や皮膚に咬み傷ができると、唾液に含まれていた細菌がそこから侵入し増殖を始めます。
  • 症状頭頚部の膿瘍 / 痛みや発熱 / 重症では腹膜炎・骨髄炎
  • 治療数日間は排膿と傷口の洗浄 / ペニシリンGの投薬

ノカルジア症

 「ノカルジア症」とは、土壌腐生細菌の一種である「ノカルジア」(Nocardia)によって引き起こされる日和見感染症です。犬と猫に感染するものとしては「N.asteroides」、猫にだけ感染するものとしては「N.brasiliensis」が確認されています。侵入経路は皮膚にできた傷や呼吸器です。
  • 症状呼吸困難 / 皮膚病変 / 胸膜炎・膿胸・胸水 / 骨髄炎
  • 治療抗菌薬の投与 / 胸腔穿刺

マイコプラズマ症

 「マイコプラズマ症」とは、細胞壁を持たない細菌の一種「マイコプラズマ」(Mycoplasma)によって引き起こされる日和見感染症です。マイコプラズマは植物、昆虫、動物など様々な生物に感染しますが、感染する対象を選り好みする「宿主特異性」があるため、生物種をまたいで感染するということはありません。細胞壁をもたないため、乾燥、日光、消毒に弱いとされます。
  • 症状くしゃみ / 咳 / 鼻炎 / 感染性関節炎 / 足を引きずる / 発熱 / 元気がない / 結膜炎 / 眼漏
  • 治療テトラサイクリン・ドキシサイクリンなどの抗菌薬投与
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真菌

 「真菌」とは細菌よりも大きく原虫よりも小さいカビの総称です。単細胞で存在するものは「酵母」、多核細胞として存在するものは「糸状菌」とも呼ばれます。大きさは1~数十μm程度です(※1μm=1mmの千分の一)。

アスペルギルス症

 「アスペルギルス症」とは、粉じん、わら、苅草、干し草の中で多数の胞子を形成する真菌の一種「アスペルギルス」(Aspergillus)によって引き起こされる日和見感染症です。多くの動物の鼻腔に常在していますが、免疫力の低下や過度な暴露をきっかけとして病原性を発揮します。かかりやすいのは屋外飼育されている中~長頭種です。
  • 症状くしゃみ / 鼻水(漿液~膿) / 鼻血 / 外鼻孔の色素脱失や潰瘍 / 篩板(しばん)を経由した中枢神経症状
  • 治療抗真菌薬の全身投与 / カテーテル挿入による局所的な投与

カンジダ症

 「カンジダ症」とは、犬や猫の口、鼻、耳、消化管、生殖器官における真菌の一種「カンジダ」(Candida albicans)によって引き起こされる日和見感染症です。外傷や火傷などで損傷した部位があったり、宿主の免疫力低下があったりすると、異常増殖して症状を引き起こします。危険因子は好中球減少症、糖尿病、グルココルチコイドの長期投与などです。また尿道カテーテルを通した医原性の感染例もあります。
  • 症状膀胱炎 / よだれ / 外耳炎
  • 治療基礎疾患のコントロール / 抗真菌薬の投与

ニューモシスティス症

 「ニューモシスティス症」とは、肺胞内でライフサイクルを完成させる真菌の一種「ニューモシスティス」(Pneumocystis carinii)によって引き起こされる日和見感染症です。犬での報告はありますが、猫における症例はありません。
  • 症状呼吸困難 / 咳 / 微熱 / 運動を嫌がる
  • 治療安静を保つ / 静脈内輸液 / 抗真菌薬の投与

ピシウム症

 「ピシウム症」とは、真菌の一種である「ピシウム菌」(Pythium insidiosum)によって引き起こされる日和見感染症です。病原性が強く、免疫力が正常な動物においてもしばしば発症します。菌は池、沼、入江、湖といった水の中に生息しており、これらの水に入ったり直接摂取することで感染します。地理的には熱帯や亜熱帯で多く、季節的には秋から冬にかけてが多いとされています。また、引き起こす症状によって「消化管型」と「皮膚型」とに分類されます。
  • 症状胃や小腸における肉芽腫性病変(消化管型) / 皮膚の潰瘍性結節(皮膚型)
  • 治療病変部の外科的な切除 / イトラコナゾールの投与
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藻類

 「藻類」とは、水中で自給自足しながら生きている植物の総称です。内部に含む色素の違いから「緑藻類」、「褐藻類」、「紅藻類」などに分かれます。大きさは1μm~1mm程度です(※1μm=1mmの千分の一)。

プロトテカ症

 「プロトテカ症」とは、クロロフィルをもたない藍藻類の一種である「プロトテカ」(Prototheca)によって引き起こされる日和見感染症です。処理されていない汚水に存在しており、犬、猫、人間といった温血動物全般に感染します。一度感染すると、薬剤で根絶することは難しく、予後は非常に悪いとされます。
  • 症状血便 / 下痢 / 体重減少 / 視覚障害 / 四肢や顔面の皮膚結節
  • 治療アンホテリシンB / ケトコナゾール / フルコナゾール
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