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イヌ伝染性肝炎~症状・原因から治療・予防法まで

 犬のイヌ伝染性肝炎(いぬでんせんせいかんえん)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

イヌ伝染性肝炎の病態と症状

 犬のイヌ伝染性肝炎とは、アデノウイルス科に属するイヌアデノウイルス1型によって引き起こされる感染症です。
 特に1歳以下の犬において致死率が高く、成犬では不顕性感染(ふけんせいかんせん=ウイルスに感染しているけれども症状が出ない状態)を示すことが多いという特徴があります。
 犬のイヌ伝染性肝炎の症状は一定していません。以下では、よくあるパターンごとに分類して表記します。
イヌ伝染性肝炎の主症状
  • 突然致死型  突然致死型(とつぜんちしがた)では、数時間前までは元気に過ごしていた子犬が急に腹痛をおこし12時間~24時間以内に死亡します。
  • 不顕性型  不顕性型(ふけんせいがた)は、感染しているにもかかわらず、何の症状も見せない状態のことです。免疫力が正常な成犬の多くはこのパターンを示します。
  • 軽症型  軽症型では食欲不振・鼻水・発熱(39℃)など軽微な症状を示します。
  • 重症型 イヌ伝染性肝炎の回復期において見られる肝炎性ブルーアイ  重症型では、2~8日の潜伏期の後、元気が無くなる・鼻水・涙・40℃以上の高熱(4~6日)、食欲不振、下痢、嘔吐、水を大量に飲む、腹痛(急性の肝炎をおこすので胸と腹の中間辺りを手で押さえると痛がる)といった症状を示します。このような状態が4~6日間続いた後、急速に治癒に向かいます。回復期にはしばしば片目、もしくは両目が前部ブドウ膜炎によって青白くにごりますが、これは一時的なもので通常は3週間以内に回復します(肝炎性ブルーアイ)。

イヌ伝染性肝炎の原因

 犬のイヌ伝染性肝炎の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
イヌ伝染性肝炎の主な原因
  • ウイルスとの接触  発病中の、もしくは体内にウイルスを保有している犬の唾液や尿、汚染された食器や衣類などを犬が舐めることによって感染します。ウイルスは伝染性が非常に強く、回復した犬でも数ヶ月に渡って尿中にウイルスを含んでいるといいますので要注意です。

イヌ伝染性肝炎の治療

 犬のイヌ伝染性肝炎の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
イヌ伝染性肝炎の主な治療法
  • ワクチン接種  ウイルスに有効な薬はありませんので、ワクチン接種が実質的な予防・治療法といえます。メリットとデメリットを獣医さんとよく話し合った上、お決めください。 犬のワクチン接種
  • 二次感染予防  抗生物質などの薬で二次感染を防ぎます。二次感染とは、ウイルスや細菌の感染によって免疫力が低下し、他の細菌やウイルスの侵入を防ぎきれなくなってしまうことです。
  • 尿への接触を避ける  散歩中、他の犬の尿に近づくことを極力避けるようにします。ウイルスは病気の回復後も、約6~9ヶ月間は尿細管中に存在し、継続的に尿中に排出されます。こうした犬が屋外の電柱などにおしっこをすると、そこが新たな感染源になります。飼い主としては、散歩中に犬の動きを観察し、不用意に他の犬の尿をくんくん嗅ぎまわらないように注意したほうが無難でしょう。 犬の散歩
  • 対症療法  疾患の原因を取り除くよりも、症状の軽減を目的とした治療が施されます。具体的には、輸液(ブドウ糖・リンゲル液・アミノ酸など)やビタミン剤、強肝剤などを投与して肝臓の回復を助けたり、輸血によって貧血を改善したりします。免疫力が十分な場合は、通常1週間以内に快方に向かいますが、不十分な場合は慢性肝炎に進行してしまうこともしばしばです。