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ブルセラ症~症状・原因から治療・予防法まで

 犬のブルセラ症について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

ブルセラ症の病態と症状

 犬のブルセラ症とは、ブルセラ属の細菌「ブルセラ・カニス」(Brucella canis)によって引き起こされる感染症です。
ブルセラ症を引き起こす「ブルセラ・カニス」(Brucella canis)の顕微鏡写真  ヒトにも動物にも感染する人獣共通感染(じんじゅうきょうつうかんせんしょう)症の1つで、1999年4月以降、日本では感染症法により四類感染症に指定されているため、診断した医師は速やかに保健所に届け出なければなりません。ちなみに指定されてから2008年までの間に、国内では13例の届け出があり、このうち12例は2005年以降です。
 日本における家畜のブルセラ症は1970年代にほぼ撲滅(ぼくめつ)されましたが、犬のブルセラ症は現在でも散見されます。これは海外からペットを輸入する際の検疫(けんえき)が不十分だったため、細菌に感染した犬を国内に入れてしまい、それが日本に定着したものと考えられます。感染率に関しては国によってばらつきがあり、日本が2~5%であるのに対し、メキシコやペルーでは約28%と高めです。
 犬のブルセラ症の症状としては以下のようなものが挙げられます。細菌の好む場所は、リンパ管、メス犬の胎盤、オス犬の生殖組織などです。猫で問題になることはありません。
ブルセラ症の主症状
  • オス犬の場合  精巣炎(せいそうえん)・陰のうの皮膚炎や潰瘍・不妊(精子の異常による)等
  • メス犬の場合  流産(妊娠45~55日ごろ)・数週間にわたる膣内からの分泌物(緑褐色~灰緑色)・不妊
  • ヒトの場合  人には感染しにくく、また感染しても発症しないことが大半ですが、万が一発症した場合は発熱・関節痛・悪寒などインフルエンザに似た症状

ブルセラ症の原因

 犬のブルセラ症の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。犬が集団で暮らしているような環境で蔓延しやすく、日本国内の事例では静岡の繁殖施設(2003年, 51頭)、沖縄の繁殖施設(2005年, 16頭)、大阪の繁殖施設(2006年, 139頭)、愛知のペットショップ兼繁殖施設(2008年, 15頭)、東京と千葉のドッグレンタル店(2008年, 18頭)などがあります。
ブルセラ症の主な原因
  • 細菌との接触  ブルセラ症は、感染した犬の流産胎子(りゅうざんたいし)、流産後の排出物、尿に接触して感染します。また犬同士が交尾することにより、細菌が生殖器粘膜から直接入り込むというルートもあります。

ブルセラ症の治療

 犬のブルセラ症の治療法としては、主に以下のようなものがありますが、決定的な治療法が無いというのが現状です。
ブルセラ症の主な治療法
  • 投薬  テトラサイクリン・ストレプトマイシン・ミノマイシンなどの抗生物質の投与が行われることがあります。しかしその効果に関しては症例によってまちまちです。
  • 感染予防  流産した犬は必ず獣医師の検診を受けましょう。まれに人間にも感染しますので、感染した犬の流産後の排出物や尿を処理するときには、速やかにゴム手袋をはめて行うようにします。