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犬の血管肉腫~症状・原因から予防・治療法まで

 犬の血管肉腫(けっかんにくしゅ)について病態、症状、原因、治療法別に解説します。病気を自己診断するためではなく、あくまでも獣医さんに飼い犬の症状を説明するときの参考としてお読みください。なお当サイト内の医療情報は各種の医学書を元にしています。出典一覧はこちら

犬の血管肉腫の病態と症状

 犬の血管肉腫とは、血管を構成している細胞がガン化した状態のことです。
血管肉腫を形成する内皮細胞  血管を断面にすると、外側から「外膜」、「中膜」、「内膜」という構造になっており、一番内側の層は「血管内皮細胞」という細胞によって埋め尽くされています。血管肉腫とは、この血管内皮細胞がガン細胞になってしまった状態のことです。
 血管肉腫は血管の存在している場所ならどこにでも発症する可能性を持っていますが、犬における好発部位は皮膚、心臓、脾臓、骨などです。また他の動物種よりも発症率が高く、全腫瘍中の2%を占めるとも言われています。この高い発症率の背景には、何らかの遺伝的な要因があると推測されています。
 犬の血管肉腫の主な症状は以下です。
犬の血管肉腫の主症状
  • 脾臓・肝臓の場合  脾臓における血管肉腫の発症率は異常に高く、全体の約50%を占めるとされています。また転移性が高いため、血管を通して肝臓や肺を侵すこともしばしばです。好発年齢は8~10歳で、症状は、嘔吐・下痢・腹痛といった漠然としたものが大半を占めます。腫瘤は大型化する傾向があり、破裂した場合は、突然犬が意識を失って倒れたり、最悪のケースでは死んでしまうこともあります。
  • 心臓の場合  心臓においては、多くが右心耳(うしんじ)と呼ばれる心臓外面についているヒラヒラ部分や右心房に発生します。心臓と胸膜に溜まった水のせいで、呼吸困難、咳など心不全の症状全般を引き起こします。
  • 皮膚の場合  真皮や皮下組織など血管が豊富な部位に発症します。犬の血管肉腫 真皮では四肢、オスの包皮、腹部に赤~青黒いできものとして現れ、皮下組織ではコリコリとした腫瘤として触知されます。血管肉腫のうち約14%を占め、好発年齢は9歳です。通常はぽつんと一つだけ現れますが、ウィペットにおいては、おそらく遺伝的な要因によって多発性の症例も散見されます。内出血を起こした場合は、患部が急に大きくなることもしばしばです。

犬の血管肉腫の原因

 犬の血管肉腫の原因としては、主に以下のようなものが考えられます。予防できそうなものは飼い主の側であらかじめ原因を取り除いておきましょう。
犬の血管肉腫の主な原因
 2015年に行われたゴールデンレトリバーを対象とした調査により、血管肉腫の発症に関わっていると考えられるDNAの一部が特定されました。両疾患を自然発症した犬と健康な犬のDNAを比較したところ、5番染色体上にある2つの遺伝子座のハプロタイプ(遺伝的に決められている染色体上のDNA配列)が発症に関わっていることがわかったといいます。詳しくはこちらの記事をご参照ください。

犬の血管肉腫の治療

 犬の血管肉腫の治療法としては、主に以下のようなものがあります。
犬の血管肉腫の主な治療法
  • 手術療法  ガンが小さく、犬に体力がある場合は、外科手術によってがん細胞を除去してしまいます。対象となるのは、真皮に出来た単発性の腫瘤、心臓、脾臓などです。
  • 化学療法・薬物療法  ガンが進行して切除が難しい場合や、患犬に体力がない場合は手術療法が見送られ、抗がん剤治療などが施されます。また手術療法後の補助療法として行われることもあります。
  • マッサージ 飼い主が日頃から、病気の早期発見を兼ねてマッサージしてあげていると、いち早く皮膚の病変を見つけることができます。犬のマッサージなどを参考にしながら、痛がる部位やコリコリした場所がないかどうかなどを注意深くモニターするようにします。なお見つかったコリコリがもしガンだった場合、むやみに触っているとリンパ管を通して細胞が広がってしまう危険性があります。「怪しい」と思ったらすぐにかかりつけの獣医さんに相談した方がよいでしょう。犬のマッサージ